スマートファクトリー(Smart Factory)は、設備および機器の自動化などを行い、業務プロセスや生産性を向上させることを指します。この概念が普及している背景には、海外でのスマートファクトリーの導入事例が多くなっていることが挙げられます。
また、現在では国内外を問わず、市場規模は拡大の一途を辿っています。直訳すると「スマートな(賢い)工場」という意味になることからもわかるように、特に製造業で導入することで、自社の生産効率の向上にもつながるでしょう。
目次
スマートファクトリーとは?イメージ図でわかりやすく解説
スマートファクトリーとは、自動化することによって生産性の向上や業務プロセス改革を行うことですが、その定義に欠かせないのが「インダストリー4.0」です。「インダストリー4.0」は、ドイツ政府が提唱する製造業のデジタル化に向けた取り組みのことで、第4次産業革命とも呼ばれています。スマートファクトリーを実現するためには、IoTやAIを活用する「インダストリー4.0」に基づいた取り組みを推進させなければなりません。
下記の表は、スマートファクトリーの流れを表したものです。まずは、IoTやビッグデータ、AIなどを活用して、エンジニアリングチェーンやサプライチェーンのネットワーク化、自動化などを行います。その後、「ニーズに即した製品設計」や「高い生産性・品質を有した生産」など、工場における業務全体の改革へとつながります。いまや、製造業においてスマートファクトリーは重要な取り組みの一つと言えるでしょう。
参考:経済産業省「スマートファクトリーロードマップ」/「ものづくりのスマート化」のイメージ
スマートファクトリーの狙いと7つの目的
それではなぜ、スマートファクトリーを導入すると良いとされているのでしょうか。その理由を解説するために、ここからはスマートファクトリーの狙いと7つの目的を紹介します。製造業として目指す姿の参考にしてみてください。
品質向上
まず1つ目の目的は、スマートファクトリーを導入することによって「品質向上」につながる点です。以下の表は、経済産業省が発表している「品質向上」に向けたロードマップです。
「スマートファクトリー化の目的」として、「不良率の低減」や「品質の安定化・ばらつきの低減」などの項目が挙げられています。設備にセンサを搭載したり、収集したデータを分析したりすることによって、品質管理が徹底できるため「品質向上」へつながるのです。
スマートファクトリー化の目的 | レベル1 データの収集・蓄積 |
レベル2 データによる分析・予測 |
レベル3 データによる制御・最適化 |
主な対象企業層/【スマートファクトリー化の対象プロセス】 |
---|---|---|---|---|
不良率の低減 | ヒトの作業内容(作業手順、作業結果など)をセンシングすることで、作業内容を収集・把握できる。 ポカミスが発生した際、ヒトへ早期に通知できる。 |
過去のポカミスを分析することで、ポカミスが発生しやすい作業工程を特定できる。 | 分析結果に基づいて、従業員を人材育成したり、設計を変更したりすることで、ポカミスの発生を抑制し、不良率を削減・最小化できる。 |
【プロセス】生産 |
品質の安定化・ばらつきの低減 (加工誤差の最小化、加工性能の最大化) |
設備にセンサを搭載してモニタリングすることで、加工寸法などの製品の品質データと設備の加⼯条件・設定値を収集・把握できる。 | 収集したデータを分析し、品質のばらつきの要因を特定することで、加工誤差や加工性能の改善につながる加工条件・設定値をモデル化できる。 | 構築した加工改善モデルを用いて、設備の加工条件・設定値を最適化することで、加工誤差を最小化したり、加工性能を最⼤化したりできる。 |
【プロセス】生産 |
品質の安定化・ばらつきの低減 (作業者の作業ばらつきの最小化) |
各従業員の作業状況(作業動線、作業時間、作業内容など)をセンシングすることで、各従業員の作業状況を収集・把握できる。 | 収集したデータを分析し、作業のばらつきの要因を特定することで、作業の改善につながる作業条件をモデル化できる。 | 構築した作業改善モデルを⽤いて、作業状況を改善、均⼀化することで、作業のばらつきを最⼩化できる。 |
【プロセス】生産 |
設計品質の向上 | 製品にセンサ・通信機能を搭載することで、製品の使⽤状況や使⽤環境のデータを収集・把握できる。 | 収集したデータと設計データとを関連付けて因果関係を明らかにすることで、品質・信頼性の向上につながる設計仕様・⽣産⽅法を分析できる。 | 分析結果に基づいて、設計仕様・⽣産⽅法を修正・改善して最適化することで、製品の品質・信頼性を向上できる。 |
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参考:経済産業省「スマートファクトリーロードマップ」/「品質の向上」に向けたロードマップ
コスト削減
2つ目の目的は、コスト削減につながるという点です。下記の表は、経済産業省が発表している「コストの削減」に向けたロードマップです。
目的とする項目には、「材料の使⽤量の削減」や「⽣産のためのリソースの削減」、「在庫の削減」などが挙げられています。特に「在庫の削減」に関しては、受注から生産、製品の出荷までデータを管理・分析することで、コスト削減の効果が期待できるでしょう。
スマートファクトリー化の目的 | レベル1 データの収集・蓄積 |
レベル2 データによる分析・予測 |
レベル3 データによる制御・最適化 |
主な対象企業層/【スマートファクトリー化の対象プロセス】 |
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材料の使⽤量の削減 | 設計事例を収集してデータベースとして蓄積することで、過去の事例を容易に参照できる。 解析・シミュレーションソフトウェアを利⽤することで、構造等を解析できる。 |
過去の設計事例の分析や、解析・シミュレーションソフトウェアなどによって、材料の軽量化や部品点数の削減につながる形状・構造等を知⾒としてモデル化できる。 | 構築した設計改善モデルを⽤いて、製品設計を最適化することで、材料の使⽤量を最⼩化できる。 |
【プロセス】製品企画、開発・設計 |
⽣産のためのリソースの削減 | MES(製造実⾏システム)などの⽣産管理システムのデータを利⽤することで、⽣産の作業プロセスの進捗状況や、ヒト(⼯数)、材料、エネルギーの投⼊状況を収集・把握できる。 | ⽣産の作業プロセスの進捗状況を踏まえて、ヒト(⼯数)、材料、エネルギーの予定投⼊量、予定⽣産量などを予測できる。 | 設備の稼動計画、ヒトの作業計画を修正・最適化することで、投⼊するヒト(⼯数)、材料、エネルギーを最⼩化できる。 |
【プロセス】生産 |
在庫の削減 | MES(製造実⾏システム)などの⽣産管理システムのデータを利⽤することで、⽣産計画や⽣産実績データの⼊⼒・表⽰・確認が容易にできる。 | 受注、⽣産、出荷の計画・実績データを連動させて分析することで、需給変動要因を明らかにしたり、需給を予測したりできる。 | 需給予測に基づいて、調達した資材や⽣産した製品の在庫が最⼩となるよう、⽣産計画・出荷計画の作成を⾃動化・最適化できる。 |
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設備の管理・状況把握の省⼒化 | 設備にセンサを取り付けてモニタリングすることで、設備の設置場所にいなくても、複数の設備の稼働状況を、遠隔でリアルタイムに収集・監視できる。 | ― | 設備に異常などが発⽣したときに、従業員への通知を⾃動化することで、監視・点検の管理⼯数を最⼩化できる。 |
【プロセス】生産 |
参考:経済産業省「スマートファクトリーロードマップ」/「品質の向上」に向けたロードマップ
生産性向上
3つ目の目的は、「生産性向上」へつながるという点です。下記は、経済産業省が発表している「生産性向上」に向けたロードマップで、5つの項目に分けて目的が記載されています。
「設備・人の稼働率の向上」や「設備の故障に伴う稼動停⽌の削減」などの目的が記されています。中でも、「人の作業の効率化、作業の削減・負担軽減」の「レベル3」では、人間とスマートロボットの業務を最適化することで、人的作業のさらなる効率化が見込めるとしています。安定性の高い生産管理を行う上で、スマートファクトリーの重要性が伺えます。
スマートファクトリー化の目的 | レベル1 データの収集・蓄積 |
レベル2 データによる分析・予測 |
レベル3 データによる制御・最適化 |
主な対象企業層/【スマートファクトリー化の対象プロセス】 |
---|---|---|---|---|
設備・ヒトの稼働率の向上 | MES(製造実⾏システム)などの⽣産管理システムのデータを利⽤することで、⽣産ライン全体の設備の稼働・ヒトの作業の進捗状況を収集・把握できる。 | 設備の稼働・ヒトの作業の進捗状況を基に、各プロセスの完了予定時間を予測できる。 設備とヒトの⾮稼動時間が発⽣する要因を分析できる。 |
⽣産ライン全体の⽣産完了予定時間が最短化されるよう、設備の稼動計画、段取り替え計画、ヒトの作業計画を修正・最適化することで、設備・ヒトの⾮稼動時間を最⼩化できる。 |
【プロセス】生産 |
ヒトの作業の効率化、作業の削減・負担軽減 (ヒトの作業プロセスの最適化) |
HMI(モバイル端末、スマートグラスなど)・RFIDなどを活⽤することで、調達した資材や⽣産した製品の管理情報、⽣産情報、設備の稼動情報を迅速かつ簡易に⼊⼒・表⽰できる。 | 作業の進捗状況に応じて、HMIに必要な情報や作業指⽰を予測して表⽰できる。 | 情報の⼊⼒・表⽰の⾃動化による作業の短時間化や、適切な判断を⽀援するための情報を提⽰することで、作業プロセスを最適化できる。 |
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ヒトの作業の効率化、作業の削減・負担軽減 (ロボットとの協調作業によるヒトの作業の効率化) |
設備にセンサを取り付ける、ヒトの作業状況(作業動線、作業時間、作業内容など)をセンシングすることで、稼働状況・作業状況を収集・把握できる。 | 収集したデータをロボットに学習させることで、ヒトの⾏動を予測し、協調して作業できる。 | ヒトとスマートロボットによる協調した作業を最適化することで、ヒトの作業の効率を向上できる。 |
【プロセス】生産 |
設備の故障に伴う稼動停⽌の削減 (故障の発⽣頻度の最⼩化) |
設備にセンサを取り付けてモニタリングすることで、設備の稼働状況を収集・監視できる。 | 収集したデータと設備異常とを関連付けて、設備の故障につながる兆候・条件を明らかにすることで、故障の発⽣時期を予測できる。 | 設備に異常などが発⽣したときに、従業員への通知を⾃動化することで、監視・点検の管理⼯数を最⼩化できる。 |
【プロセス】生産 |
設備の故障に伴う稼動停⽌の削減 (復旧の早期化) |
設備にセンサを取り付けてモニタリングすることで、設備の稼働状況を収集・監視できる。異常や故障が発⽣した際、ヒトへ早期に通知できる。 | 過去の故障事例を分析することで、正確な原因究明や適切な対策の⽴案につながる知⾒を体系化できる。 | 設備の故障が発⽣したときに、知⾒に基づいて原因究明・対策検討の判断を⽀援することで、復旧を早期化し、稼動停⽌時間を削減・最⼩化できる。 |
【プロセス】生産 |
参考:経済産業省「スマートファクトリーロードマップ」/「品質の向上」に向けたロードマップ
製品化・量産化の期間短縮
4つ目の目的は、スマートファクトリーの導入が製品化・量産化するまでの期間短縮へつながるという点です。下記の表は、経済産業省が発表している「製品化・量産化の期間短縮」に向けたロードマップです。
「製品の開発・設計の⾃動化」や「仕様変更への対応の迅速化」などの目的が挙げられています。特に「⽣産ラインの設計・構築の短縮化」では、⽣産ラインシミュレータを使って生産ラインの設計を行うことで、会社ごとの特性に最適化させた生産現場の構築を目指せるでしょう。
スマートファクトリー化の目的 | レベル1 データの収集・蓄積 |
レベル2 データによる分析・予測 |
レベル3 データによる制御・最適化 |
主な対象企業層/【スマートファクトリー化の対象プロセス】 |
---|---|---|---|---|
製品の開発・設計の⾃動化 | 設計事例を収集してデータベースとして蓄積することで、過去の事例を簡単に参照できる。 解析・シミュレーションソフトウェアを利⽤することで、構造などを解析できる。 |
過去の設計事例や、解析・シミュレーションソフトウェアなどによって分析することで、設計仕様を満たし、且つ、⽣産しやすい形状・構造等を知⾒としてモデル化できる。 | 構築した設計改善モデルを⽤いて、製品設計を⾃動化することで、製品開発・設計期間を短縮できる。 |
【プロセス】製品企画、開発・設計 |
仕様変更への対応の迅速化 | E-BOM(設計部品表)やM-BOM(製造部品表)などを利⽤することで、部品の詳細情報を簡単に表⽰・確認できる。 | E-BOMやM-BOMなどをデータ連携することで、開発、設計、⽣産のデータを⼀元的に管理できる。 仕様変更となった場合、影響範囲と影響度を分析できる。 |
仕様変更となった場合、統合BOMを通じて、開発、設計、⽣産⼯程のデータを連動させて反映することで、仕様変更の対応時間を最⼩化できる。 |
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ヒトの作業の効率化、作業の削減・負担軽減 (ロボットとの協調作業によるヒトの作業の効率化) |
設備にセンサを取り付ける、ヒトの作業状況(作業動線、作業時間、作業内容など)をセンシングすることで、稼働状況・作業状況を収集・把握できる。 | 収集したデータをロボットに学習させることで、ヒトの⾏動を予測し、協調して作業できる。 | ヒトとスマートロボットによる協調した作業を最適化することで、ヒトの作業の効率を向上できる。 |
【プロセス】生産 |
⽣産ラインの設計・構築の短縮化 | ⽣産ラインシミュレータなどを利⽤することで、サイバー上で⽣産ラインを設計できる。 | ⽣産ラインシミュレータなどを利⽤することで、⽣産ラインのレイアウト、⽣産能⼒、作業⼯程、搬送ルート、投資コストなどを事前に評価・検証できる。 | サイバー上で⽣産ラインを設計し最適化した上で、実世界の⽣産現場へ実装することで、構築時の試⾏錯誤を削減し⽣産ライン構築期間を短縮できる。 |
【プロセス】生産 |
参考:経済産業省「スマートファクトリーロードマップ」/「品質の向上」に向けたロードマップ
人材不足・育成への対応
5つ目の目的は、人材不足・育成への対応につながるという点です。下記は、経済産業省が発表している「人材不足・育成への対応」に向けたロードマップで、「多様な⼈材の活⽤」と「技能の継承」という目的が挙げられています。
中でも、「多様な⼈材の活⽤」では、⾳声認識機器なども使った人材活用の方法を解説しています。このような遠隔のサポートツールなどを上手く活用することで、一部の無人化も期待できる上、広範囲に渡るオペレーションが可能となるでしょう。
スマートファクトリー化の目的 | レベル1 データの収集・蓄積 |
レベル2 データによる分析・予測 |
レベル3 データによる制御・最適化 |
主な対象企業層/【スマートファクトリー化の対象プロセス】 |
---|---|---|---|---|
多様な⼈材の活⽤ | 各従業員の作業熟練度、知識、⾝体能⼒、使⽤⾔語などを、データベースとして蓄積することで、各従業員の特性情報を利⽤できる。 解析・シミュレーションソフトウェアを利⽤することで、構造などを解析できる。 |
― | HMD(ヘッドマウントディスプレイ)や⾳声認識機器などのウェアラブルデバイス、パワーアシストスーツ、⽣体センサなどを活⽤し、ヒトの能⼒を拡⼤することで、特性が異なる多様な⼈材を活⽤できる。 |
【プロセス】生産 |
技能の継承 | 熟練技能者の技能(段取り調整⼒、状況判断⼒、⼿わざ、トラブル対応⼒など)をセンシングすることで、データベースとして蓄積できる。 | 収集したデータを分析し、その他の作業者と⽐べ、熟練技能者が優れている点を明らかにすることで、技能・ノウハウ・知⾒を体系化できる。 | 体系化した技能・ノウハウ・知⾒を国内外の拠点へ共有することで、それらを継承し、ヒトの能⼒を向上できる。 それらをスマートロボットに学習させることで、ヒトを代替できる。 |
【プロセス】生産 |
参考:経済産業省「スマートファクトリーロードマップ」/「品質の向上」に向けたロードマップ
新しい付加価値の提供・提供価値の向上
6つ目の目的は、新しい付加価値の提供・提供価値の向上につながるという点です。下記の表は経済産業省が発表している「新しい付加価値の提供・提供価値の向上」に向けたロードマップです。
「多⽤なニーズへの対応⼒の向上」や「新たな製品・サービスの提供」などの項目が挙げられています。スマートファクトリーを導入することで、データの収集・分析がしやすくなるため、顧客ニーズを満たせる新たな製品やサービス提供を実現できるでしょう。
スマートファクトリー化の目的 | レベル1 データの収集・蓄積 |
レベル2 データによる分析・予測 |
レベル3 データによる制御・最適化 |
主な対象企業層/【スマートファクトリー化の対象プロセス】 |
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多⽤なニーズへの対応⼒の向上 (個別ニーズにあわせた多品種の製品の提供) |
各製品に共通する部分を定義して、製品の構造、設計・⽣産プロセス、加⼯基準などを共通化することで、共通モジュールと個別モジュールの組み合わせによるフレキシブルな⽣産体制を構築できる。 解析・シミュレーションソフトウェアを利⽤することで、構造などを解析できる。 |
調達・⽣産・販売などの社内関係部⾨間でデータ連携することで、調達計画・⽣産計画・物流計画などを情報共有できる。 | 設備・ヒトへの作業指⽰・部品供給や段取り替えの計画策定を⾃動化・最適化することで、個別のニーズにあわせて多品種の製品をフレキシブルに⽣産できる。 |
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多⽤なニーズへの対応⼒の向上 (顧客ニーズにあわせたオンデマンドな製品・サービスの提供) |
ERP(統合業務管理システム)、MES(製造実⾏システム)、SCM(サプライチェーンマネジメントシステム)などのデータを利⽤することで、受注、調達、⽣産、物流、販売などの計画・実績データを、簡単に表⽰・確認できる。 | 受注状況、販売状況などを分析することで、需要を予測できる。 社内関係部⾨やサプライチェーン上の企業間でデータ連携することで、調達計画・⽣産計画・物流計画などを情報共有できる。 |
サプライチェーン全体で、⽣産計画・物流計画などを最適化することで、顧客ニーズにあわせてオンデマンドに製品・サービスを提供できる。 |
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提供可能な加⼯技術の拡⼤ | MES(製造実⾏システム)などの⽣産管理システムのデータを利⽤することで、⽣産の進捗状況を収集・把握できる。 | 共同受注を⾏う企業間でデータ連携することで、⽣産計画・進捗状況などを情報共有できる。 | 各企業における加⼯時間・加⼯ロット単位などの違いを考慮して、全体で、⽣産計画・物流計画などを最適化することで、共同受注⽣産体制を構築し、さまざまな加⼯技術を提供できる。 |
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新たな製品・サービスの提供 (新たな製品を先回りした企画・提案) |
製品にセンサ・通信機能を 搭載することで、製品の使⽤状況や使⽤環境のデータを収集・把握できる。 | 収集したデータを分析し、ユーザを⾏動観察する(⼈間⼯学、⼼理学などの観点から分析する)ことで、⾮顕在ニーズを把握できる。 社内関係部⾨やサプライチェーン上の企業間でデータ連携することで、調達計画・⽣産計画・物流計画などを情報共有できる。 |
把握したニーズを実現する製品・機能・サービスを先回りして企画・提案できる。 |
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新たな製品・サービスの提供 (製品に関連した新しいサービスの提供) |
製品に組み込まれたセンサなどを利⽤したり、製品にセンサ・通信機能を搭載したりすることで、製品の使⽤状況、使⽤環境のデータ、製品の制御データを収集・把握できる。 | 収集したデータを分析し、製品の利⽤改善・予防保全につながる知⾒や、別⽤途への製品稼動情報の利⽤による新たな付加価値提供につながる知⾒を獲得できる。 社内関係部⾨やサプライチェーン上の企業間でデータ連携することで、調達計画・⽣産計画・物流計画などを情報共有できる。 |
獲得した知⾒を活⽤することで、製品に関連した新たなサービス・アフターサービスを提供できる。 |
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製品の性能・機能の向上 (製品性能の最⼤化・カスタマイズ化) |
製品に組み込まれたセンサなどを利⽤したり、製品にセンサ・通信機能を搭載したりすることで、製品の使⽤状況、使⽤環境のデータ、製品の制御データを収集・把握できる。 | 収集したデータを分析することで、ユーザにおける製品の使⽤⽅法の傾向を把握できる。 | ユーザにおける製品の使⽤⽅法の傾向にあわせて、製品の制御設定値を最適化することで、製品の性能を最⼤化・カスタマイズ化できる。 |
【プロセス】製品稼働・サービス提供 |
製品の性能・機能の向上 (製品への新規機能の追加) |
製品に通信機能を搭載することで、ユーザが使⽤している製品の状態を収集・把握できる。 | ― | 通信機能を通じて、ソフトウェアを遠隔アップデートすることで、製品に新規機能を追加できる。 |
【プロセス】製品稼働・サービス提供 |
参考:経済産業省「スマートファクトリーロードマップ」/「品質の向上」に向けたロードマップ
リスク管理の強化
7つ目の目的は、リスク管理の強化につながるという点です。下記の表は、経済産業省が発表している「リスク管理の強化」に向けたロードマップです。
設備や金型の供給企業、素形材加⼯企業などをスマートファクトリー化の対象としており、安全性の担保、予知保全の強化を行うためには重要な項目と言えるでしょう。
スマートファクトリー化の目的 | レベル1 データの収集・蓄積 |
レベル2 データによる分析・予測 |
レベル3 データによる制御・最適化 |
主な対象企業層/【スマートファクトリー化の対象プロセス】 |
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リスク管理の強化 | 製品にRFIDや通信機能を搭載し、加⼯・組⽴・検査・出荷のデータを蓄積することで、製品個体ごとの品質を証明できる。 解析・シミュレーションソフトウェアを利⽤することで、構造などを解析できる。 |
製品に不具合が発⽣したときに、製品や資材に蓄積されたデータを分析することで、不具合の原因の特定を早期化できる。 | 製品に不具合が発⽣したときに、通信機能を通じて、製品を使⽤しているユーザを把握し、対策を講ずることで、影響範囲を最⼩化できる。 |
【プロセス】製品稼働・サービス提供 |
参考:経済産業省「スマートファクトリーロードマップ」/「品質の向上」に向けたロードマップ
スマートファクトリー化のメリット・課題
企業のスマートファクトリーを推進することには、メリットだけではなく、デメリットや課題もあります。以下の項目で詳しく見ていきましょう。
メリット
スマートファクトリー化を行うことで、おもに「業務の見える化」と「エネルギー最適化」の2つのメリットがあります。まず「業務の見える化」のポイントは、生産性の高い業務と低い業務を、収集したデータに基づいて可視化できる点にあります。生産性の低い業務に対して、改善点をフィードバックしていくことで、工場全体の生産性が向上でき、結果的に利益率のアップにもつながるでしょう。
また、「エネルギー最適化」も大きなメリットの一つです。製造業では、稼働している機器や設備、空調にかかる多くのエネルギーを消費しています。そこで工場全体のエネルギー消費を削減するFEMS(工場エネルギー管理システム)を導入することで、各種機器・設備の運転制御やピーク電力の調整が行えます。過剰なエネルギー消費を抑えることで、工場稼働におけるコスト削減が見込めるのです。
課題とリスク
大きな2つのメリットがある一方、課題とリスクもあります。3つの壁とも言われる課題とリスクについて、具体的な導入に向けた調査のためにも参考にしてみてください。
要件定義
まず、一つ目の課題は、要件定義が困難である点です。現在、製造現場で稼働している装置や設備は、そもそもデータの取得を前提としていないものも多く存在するでしょう。そのため仮にデータを取得できたとしても、それぞれのフォームや粒度が異なるため、データ分析のプロセスへたどり着くのは至難の業と言っても過言ではありません。
要件定義をスムーズに行うには、データ活用の目的をある程度絞り込んだ上で、ネットワーク構築に向けた全体設計を行う必要があります。
人財確保
2つ目の課題は、人財確保が難しいことが挙げられます。収集した膨大なデータも、目的に沿った分析を行わなければ十分に活用することはできません。効果的なデータ活用を実施するためには、まずデータに関する知見やノウハウを有した人財を確保する必要があるのです。
セキュリティ保全
3つ目は、セキュリティ保全に関する課題です。自社にとっての財産とも言える膨大なデータを管理するためには、外部へ持ち出されることのないようにセキュリティを強化する必要があります。2021年上半期には、身代金要求型ウイルス(ランサムウェア)による被害が61件警察庁へ報告されるなど、サイバーウイルスの被害が増加傾向にあります。被害を受けないためにも、セキュリティ保全の体制づくりは重要です。
スマートファクトリー化の導入ステップと進め方
前述したスマートファクトリー化のメリット・デメリットを踏まえた上で、導入に際しては以下3つのステップに沿って実施すると良いでしょう。
導入ステップ | 進め方 |
---|---|
① スマート化の構想策定 | 経営者が強い意思を持ち、トップ主導で推進する |
スマート化の⽬的・⽬標を明確にする | |
スマート化の内容、対象範囲、レベルを明確にする | |
責任、役割を明確にし、組織内で合意形成する | |
データを提供する側にとってのうれしさを組み込む | |
② トライアル・システム導入 | 全体最適を念頭に置きつつ、ステップを踏んで導⼊を進める |
データを絞り込み、収集を⾃動化して、負担を軽減する | |
初期の段階では、機能を絞り込みスモールスタートで始める | |
トライアルを繰り返し、改善を図りながら完成を⽬指す | |
中⻑期の段階では、標準ツールを活⽤して拡張させていく | |
③ 運用 | 導⼊効果を共有し、従業員のモチベーションを向上させる |
ものづくりとIoTを理解した⼈材へと育成・意識改⾰を図る |
参考:経済産業省「スマートファクトリーロードマップ」/「システムの各導入ステップにおける成功ポイント」
まずは、「スマート化の構想策定」のステップを踏む必要があります。その際、ポイントとなるのは目的や工程を限定してから開始する「スモールスタート」の考え方です。いきなり全体をスマートファクトリー化するのは難しいため、限定的にスタートさせ、徐々に対象工程や領域を拡大していくのです。
続いて、「トライアル・システム導入」のステップを踏んだ上で、「運用」を行います。始めからスムーズにいくとは限らないため、PDCAを繰り返して改善しながら、自社の製造にとって最適なスマート化を行いましょう。
製造業でのスマートファクトリー化を検討するなら実績班長
製造業でスマートファクトリー化を目指すなら、「実績班長」を導入すると良いでしょう。おすすめする3つの理由について解説します。
コストを抑えてIoTの導入ができる
MES(製造実行システム)を提供している「実績班長」であれば、コストを抑えながらIoT導入が可能です。「実績班長」では、古い設備・機器を活かしたまま、外付けセンサを使ってIoT化を実現します。新しい設備の導入費やプログラム改修費を抑えられるため、低コストでのIoT導入ができます。
中小から大手まで多種多様な企業ニーズに適応できる
企業ごとのニーズにあわせて手軽に導入できることも「実績班長」の特徴です。その理由は、「実績収集」や「工程管理」などの機能ごとに、ライセンス形式で導入できるためです。必要な機能のみを選んで導入できるため、中小企業や大手企業の違いを問わず、幅広い企業ニーズに応えられるのです。
現場社員のスキルに左右されない
社員それぞれのスキルに左右されることなく、安定性の高いものづくりを目指せるのも「実績班長」の特徴です。例えば、熟練の作業者が設定する値を、現場環境も含めてデータ収集できるため、新人教育への活用も可能です。
さらに、作業時間や段取り時間のデータ収集も実施でき、効果測定を客観的に行い、確実な生産管理を実現できます。
実績班長の導入事例
導入企業 | 新協技研株式会社 |
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業種 | 製造業 |
- 【導入前の課題】
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- 社員の意識改革
- コスト削減
- 【導入後の効果】
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- IoTを活用してメッキ層の温度データを収集し予兆検知を実現した
- 年間数百万円単位の不良損失を削減した
- 現場の見える化により現場作業者の意識改革を実現した
導入前には、社員の意識改革や、製品品質に影響する温度などプロセス条件の安定が課題でした。しかし、IoT導入を行うことでメッキ層の温度データを収集して、予兆検知が可能となりました。その効果もあり、年間で数百万円単位の不良損失の削減を実現し、ボイラー運転時間も年間で120時間短縮しました。さらに、現場の見える化により、現場作業者の意識改革にもつながっています。
まとめ
スマートファクトリー化を行うことで、品質や生産性の向上、コスト削減など多くのメリットがあります。今後の製造業において、スマートファクトリー化を検討することはもはやトレンドではなく、重要な課題とも言えるでしょう。
「実績班長」は、機能ごとにライセンス形式で導入できる上、工程の効率化も期待できます。2022年1月には、スマートファクトリーの展示会「第6回スマート工場EXPO」にも出展するなど、注目も集めています。これから製造業のスマートファクトリー化をお考えの方は、ぜひ「実績班長」を導入してみてはいかがでしょうか。