良いものをより安く、安定的に期限内で作ることが求められる製造業の現場では、作業進捗の管理が欠かせません。作業計画と現場のズレを調整するのが作業進捗の役割ですが、ズレの把握が難しく、計画が遅れ気味になっている現場も少なくありません。作業進捗を管理する方法やメリット、作業進捗を管理する便利なシステムについて紹介します。
目次
作業進捗の意味
作業進捗とは、各工程における作業の進行状況を把握し、日々の作業の進み具合を調整することをいいます。
ビジネスシーンでは、進捗状況、進捗具合、進捗率といった言葉が飛び交っています。業務の進み具合を確認するときは「進捗状況はどうなっている?」と聞くことがあります。「進み具合」と尋ねるより、「進捗」という言葉を使うことで、「予定より遅れているとすれば調整できるのか」との意味も含まれています。
製造業も含めビジネスシーンにおいて、作業進捗の管理することは、全社的な目標達成に近づく一歩といえるでしょう。
作業進捗を管理するメリット
ある工程の作業に遅れがある場合、後工程に悪影響を及ぼすため、早急にスケジュールを調整し直し、遅れによる損失やミスを未然に防ぐことが大切です。作業進捗を管理するメリットは以下の通りです。
- 【作業進捗管理のメリット】
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- 業務の優先順位が明確になる
- スケジュールの把握がしやすい
作業進捗管理を行うと、業務の優先順位が明確になると同時に、スケジュールの把握がしやすくなります。突発的な異常が発生したとしても、作業進捗管理が機能していると、慌てずに対応できます。
業務の優先順位が明確になる
作業進捗を管理することで、業務の優先順位が明確になります。工場では複数の製品を作っていて、納期もバラバラです。優先順位を付けずに作り始めると、工程間に通常、滞留するはずのない仕掛品がたまるといった事態が発生するかもしれません。
優先順位を明確にし、現場にその情報を共有することで、作業員のモチベーションも上がり、業務がスムーズに流れるようになります。さらに、業務のムダが見えてくるため、改善がしやすくなります。
スケジュールの把握がしやすい
作業進捗管理を行うと、スケジュールの把握がしやすく、ムダな空き時間を減らすことができます。現場では、時間のムダ、動作のムダなど、徹底的にムダを排除することが大切です。
スケジュールを把握しないまま、業務をさばいていると、今やる必要のない作業を行い、やるべき作業が後回しになるなどのムダが生じてしまいます。納期を意識してスケジュールを把握することで、現場の意思疎通を図ることができ、業務の流れが効率化します。
作業進捗管理をするうえでのポイント
次工程から催促されてから仕掛品を渡す、納期遅延が頻発するのは、作業進捗管理の精度の悪さが原因です。作業進捗を管理するうえで大切なポイントは以下の3つです。
- 【作業進捗管理をするうえでのポイント】
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- 誰もが進捗状況を確認できるようにしておく
- 作業進捗の見える化をしておく
- 進捗報告の定義を明確にする
管理監督者や現場作業員など、誰もが進捗状況を確認できる状態にしておくことが大切です。そのためにも、作業進捗の見える化を行います。現場から上がってくる進捗報告の定義を明確にして、共通認識を深めることも大切です。
誰もが進捗状況を確認できるようにしておく
誰もが作業進捗の状況を確認できるようにしておくことが大切です。複数の作業者がさまざまなエリアで作業する場合など、共通の認識を持って作業に取り組まないとうまくいきません。進捗状況の共有がメンバー間でなされていると、一人ひとりのスケジュールが連携し、全社的に同じベクトルを向いて作業を進めることができます。
誰が、いつまでに、何をすべきかを明確にしたうえで、他のメンバーが確認できるようにしておくと、それぞれに責任感が生まれ、現場が引き締まり、モチベーションが高まります。
作業進捗の見える化をしておく
作業進捗管理において作業進捗の見える化をしておくことは、とても重要です。
作業進捗の見える化がリアルタイムでできると、誰が待っているのか、どこまで進んでいるのかが一目で把握できます。全体の流れだけでなく、個人的にも納期を意識して作業に当たるため、集中して取り組めるようになります。
現場の作業者は目の前の作業に追われています。リアルタイムの見える化がされていないと、異常の検出が遅れる恐れがあります。見える化すると、問題点を発見しやすくなるのもメリットです。
進捗報告の定義を明確にする
作業進捗は作業に当たる全員が状況報告をするからこそ、意義あるものになります。作業進捗報告を提出したとしても、内容が抽象的で分かりにくかったり、具体的に問題点の把握ができていなかったりすると、進捗報告が無意味になってしまいます。進捗報告の定義、報告の目的や書き方などを明確にしてから取り組みましょう。
- 1. 提出した年月日
- 2. 「××に関する進捗状況」などのタイトル
- 3. 提出先の氏名
- 4. 提出する人の氏名
- 5. 「〇日現在の進捗状況」などの期間
- 6. 作業進捗の状況
- 7. 作業進捗状況に対する評価
- 8. 課題や解決策
- 9. 今後の見通し
作業進捗を効果的に管理する方法
作業進捗を効果的に管理する方法として以下の4つが挙げられます。
- 【進捗管理方法】
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- 日報
- グラフ報告
- ガントチャート
- カンバン方式
日報
日報は毎日の業務活動を書き留めるツールですが、上手に活用すると作業進捗管理にも役立ちます。
業務がスムーズに進んだ理由や、うまくいかなかった原因とその解決策なども記載することで、同じ悩みを持った人へのアドバイスになります。上司や先輩社員からのフィードバックがあると、より良い解決策が早く見つかるかもしれません。また、日報を蓄積することで、現場独自の効率的なノウハウが生まれるきっかけになることもあります。
日報は読んでもらうことで効果が生まれます。毎日同じ作業の繰り返しで発見が見つからない、書いている意味が分からない、と思いながら書いていたり、日報を確認しないでいると有効活用ができません。
グラフ報告
作業進捗管理をグラフ報告で行うメリットは3つあります。
まず、数値で比較するよりも、グラフにすると視覚的に伝えやすくなります。次に棒の高低差、線の傾きなどで表現されるため、言葉で説明するよりも効果的です。3つ目は、進捗状況の見える化に最適で、作業員のモチベーションも高まります。
一方、グラフの見た目を操作することで、人をだますことができる点がデメリットとなります。例えば、棒グラフや折れ線グラフの軸を変えることで、棒の高さや線の傾きが変化します。グラフのメリット・デメリットを理解したうえで、グラフ報告を行いましょう。
ガントチャート
ガントチャートは、アメリカの経営コンサルタントであるヘンリー・ガントが考案した、工場の作業進捗管理を行う手法です。縦軸に作業内容や製品の名前、横軸に日付を取り、必要な期間や進捗状況を棒グラフで表す一覧表で、工場内の全工程を一目で把握できるのが一番のメリットです。
ガントチャートを活用して作業進捗管理を行うと、「いつまでに・誰が・何をしないといけないのか」が把握できます。
エクセルで簡単に作成でき、ガントチャートの無料アプリもあるのですが、生産計画が変更になったとき、全体の棒グラフを書き換える必要があり、手間と時間がかかるのがデメリットです。
カンバン方式
カンバン方式は、トヨタ自動車由来の生産管理方式として有名ですが、作業進捗管理にも有効です。
複数人で作業を行う場合、必要な作業を洗い出し、1つのボードに「作業前」「作業中」「作業完了」に区切り、それぞれのカンバン(作業内容)を状況に合わせた場所に貼っていきます。例えば、作業がまだ終わっていないときは、「作業中」の所にカンバンを貼ります。
カンバン方式は、それぞれの作業の現状をビジュアル的に把握することができるため、スケジュール変更が起こりやすい作業の進捗状況を把握するのに適しています。
カンバン方式では、作業の重要性や遅れている作業の影響をリアルタイムで把握できないというデメリットもあります。
作業進捗管理はシステム導入がおすすめの理由
全社的な作業進捗管理を行うなら、システム導入を検討してみましょう。システム導入をおすすめする理由は以下の3つです。
- 【作業進捗管理はシステム導入がおすすめの理由】
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- 業務の効率化
- タスクの一括管理ができる
- どこにいてもアクセスできる
システムを導入することで、作業進捗の見える化が実現し、業務の効率化ができます。1つの画面で全体の進捗状況が表せるため、タスクの一括管理ができるのも魅力です。どこにいてもアクセスできるため、国内外に工場があっても対応できます。
業務の効率化
IoTを活用して生産設備ごとのデータをリアルタイムに収集しているため、業務の効率化を図ることができます。進捗状況はリアルタイムで表示されるので、仮に設備が停止しても、迅速に対応でき、停止時間を最小限に抑えます。誰が、どの品番を、いくつ作っているときに、何が起こったかをデータとして蓄積するので、作業員のスキルアップにもつながります。
システム化できていないと、リアルタイムに進捗状況を把握できず、異常の検出が遅くなり、納期に悪影響を及ぼします。
タスクの一括管理ができる
工場では人が主役で、タスク(作業)ごとの人の動きを把握しないと、その先に進むことができません。システムを導入すると、設備の動き、タスクごとの動きをデータ化して一括管理できます。タスクを一括管理することで、現場のカイゼン活動をサポートするだけでなく、多様な切り口での現状分析が可能になります。
例えば、多台持ち作業をしていて、どのタスク中に設備が停止したかをリアルタイムで気付くことで、原因追及に役立ち、カイゼンにつながります。
どこにいてもアクセスできる
システムを導入すると、離れた工場の作業進捗状況を把握できます。ネットワークでつながっていると、いつでも、どこにいてもアクセスできるため、本社から地方にある拠点を支援する体制を取ることも難しくありません。
本社にいながら複数工場の作業進捗状況をリアルタイムに見ることができるので、時差のある海外工場の夜間の進捗状況も分かります。コロナ禍で海外出張ができなくても画面を確認するだけでよく、生産管理者の作業負荷が軽減されます。
実績班長で作業進捗管理を自動化した事例
実績班長で作業進捗管理を自動化した事例を紹介します。
導入企業 | 気高電機株式会社 |
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業種 | 家電メーカー |
- 【導入前の課題】
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- 予算を抑えたシステムにする
- 1からの構築ではなく、システムのプラットフォームに装置を連動させて使用する
- IoT技術で全成型機、周辺設備を連動し成形条件と品質データの見える化行う
- 【導入後の効果】
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- 生産進捗の見える化による稼働率向上
- データ分析による不良出現傾向の事前検知
システムの選定に当たり、テクノシステムが一番近いイメージでした。「実績班長」にはIoTの仕組みもあり、使えるシステムでした。「実績班長」を導入したことで、予想通りの進捗モニタリングができています。生産進捗の見える化により、人のミスで次工程の生産準備が間に合わないことにより発生していた不稼働ロスがなくなりました。
これまでは、不良品ができて初めて、設備の不備が発覚することがほとんどでしたが、温度データなどをきちんと取ったことで、金型の冷却不全の傾向が見え、不良品が発生するラインが分かるようになりました。
まとめ
作業進捗の管理はリアルタイムで見える化することが重要で、データ化することでカイゼン活動につながります。異常を検出してからでは、不良品の発生などの対応が遅くなるため、システムを導入して効率よく管理することがポイントです。「実績班長」を導入すると、全社的な作業進捗管理が可能です。現場の進捗状況をリアルタイムで見える化したいが、実現方法が分からない、といった場合には、お気軽にご相談ください。