熟練工、新人、パート・アルバイト、季節工など、工場で働く人はさまざまですが、どんな人でも必ずミスをします。人間の注意力は、1回につき15∼30分程度といわれています。工場の生産システムが年々高度化、複雑化する中で、「ついウッカリ」の小さなミスが倒産の危機に至るケースもみられます。作業ミスが起きる理由と防止策、作業ミスを改善するシステムについて紹介します。
目次
作業ミスが引き起こす損失
工場内では、小さなミスが大きな損失へとつながるケースが少なくありません。小さなミスだからこそ、誰も気づかず、そのままの状態が続いてしまうこともあります。
- 出荷する段ボールにラベルを貼り間違えて、最終工程で気付き全て貼り直した
- ボタンを押し間違えてラインを長時間停止させた
- 数字をひと桁間違えて入力して億単位の損失を出した
- 鶏肉を落としてしまい、全て廃棄処分することになった
近年ではオンライン管理や、省人化が進んだ生産ラインが増えていることから、ワンクリックのミスやうっかりミスで損失が膨れ上がることもあります。
作業ミスが起こる原因
作業ミスの多くは、ヒューマンエラーによるものです。人為的なミスのことで、JMAC(日本能率協会コンサルティング)によると、作業ミスとは、「目標を実現するために想定された行為」から外れた行為と定めています。ヒューマンエラーが起こる原因は、以下の通りです。
- 【ヒューマンエラーによる作業ミスが起こる原因】
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- 不注意
- 意識低下
- 疲労
- 錯覚
- 経験不足
- 慣れ
- 連絡不足
- リスク放置
不注意
不注意によるヒューマンエラーは、他のことに注意が散漫していて、作業に集中できていない状態で起きるエラーです。自分の作業に没頭していて、周りが見えていない状態でも生じることもあります。考え事や心配事がある、お酒を飲みすぎてぼんやりしている、といったときに不注意の状態となりやすいです。
不注意が原因となる作業ミスを防止するために、作業中は周りの人とコミュニケーションを取る、声掛けする、指差しする、などを積極的に行い、作業に集中できるようにしましょう。二日酔いや体調がすぐれない場合は、思い切って休むことも大切です。
意識低下
意識低下によるヒューマンエラーは、単調な同じ作業を繰り返し続けている状態で起きるエラーです。同じ作業を長い間行っていると、頭の回転が鈍くなり、予期せぬことが起きたとしても対応できなくなることがあります。
単純作業を長時間続けないことが、意識低下による作業ミス防止に最も効果的です。作業を継続する時間を短くして、こまめに休憩を入れる、休憩のときは身体を動かす、別の作業を間に入れる、などを検討してください。
疲労
疲労によるヒューマンエラーは、肉体的疲労や精神的疲労、もしくは両方の疲労がたまることで起きるエラーです。休日に遊び過ぎた、残業続きで心身に負担がかかっている、といったときに疲労は発生します。疲労がたまると身体が思うように動かなくなり、作業中の事故を引き起こすおそれがあります。
定期的に健康診断を受ける、ぐっすり眠る、自然の中で身体を動かす、こまめに休憩を入れる、など行い、疲労による作業ミスを防止しましょう。現場責任者は作業員の疲労状態を把握し、健康管理に気を配るのも仕事です。
錯覚
錯覚によるヒューマンエラーは、指⽰の聞き間違いや見間違い、勘違いや思い込みによって起きるエラーです。指⽰内容が分かりにくい、文字が雑で読み取りにくい、自分なりに解釈した、といったときに錯覚は発生します。
伝達⽅法を改善し、分かりやすく表示する、指示を反復する、などの工夫で錯覚によるヒューマンエラーは防止できます。伝える側が指示を出すとき、どうすれば分かりやすくなるかを考えながら伝えることも大切です。
経験不足
経験不足や無知によるヒューマンエラーは、業務に対する知識や経験がないことによって起きるエラーです。新人は経験不足によるエラーを引き起こしやすいため、徹底した教育を行う必要があります。
不明な点があるとマニュアルを見れば分かるように整備し、早く業務に慣れてもらうことで、経験不足によるヒューマンエラーは防止できます。「分からない」と恥ずかしくて言えない新人もいるかもしれません。現場管理者や先輩が積極的に声掛けをしてください。
慣れ
慣れによるヒューマンエラーは、業務に慣れたと思う気持ちが生じたころに起きるエラーです。新人のときは、おっかなびっくりで行っていた作業でも、慣れてくると「このくらいは⼤丈夫」と危険を軽んじてしまい、普段では考えられないようなミスをしてしまいます。
何十年も働く熟練工でも慣れによるエラーは起こります。時間があればマニュアルを見る、慣れによるエラーはベテランにも起こると認識することで、慣れによるヒューマンエラーは防止できます。
連絡不足
絡不⾜によるヒューマンエラーは、コミュニケーションの障害で起きるエラーのことです。複数⼈で作業する現場で、指示が全員に伝わっていない、作業員同士でトラブルがあり、特定の人だけに連絡がない、といったときに連絡不足のエラーは発生します。
言葉による連絡だけでなく、掲示板に掲載する、グループラインに内容を載せる、教えてあげる、などの対策を行うことで、連絡不足によるヒューマンエラーを防ぐことができます。
リスク放置
リスク放置によるヒューマンエラーは、現場にいる全員が安全に働く意識を欠落していることで起きるエラーです。5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)が徹底していない、マニュアル通りの手順を踏んでいない、といったルーズな現場だとリスクを放置する状態が発生します。
集団としてリスク放置をしているときは、組織的な対策が求められます。現場管理者からの聞き取り、リスク放置の理由などを明らかにした上で防止策を考えるのですが、もしかすると管理者やリーダーの交代も検討材料になるかもしれません。
作業ミスを防止する対策
「ポカよけ」と呼ばれる仕組みや装置を生産ラインに導入している企業も多いことでしょう。規格外の仕掛品は次工程に流さない、アラートが鳴る、などがポカよけの代表例です。ポカよけ以外にも、作業ミスを防止する対策として以下の5つが挙げられます。
- 【作業ミスを防止するための対策】
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- チェックリストの活用
- ミスの見える化
- ミスの起きにくい仕事環境を整える
- ミスが起きた作業の業務フロー図を作成する
- 作業を自動化する
作業ミスを防止するために、チェックリストで確認し、ミスの見える化をすることは有効です。業務フロー図を作成するほか、ミスが起きにくい仕事環境を整えることも大切です。作業ミスの多くはヒューマンエラーのため、人があまり関わらないように作業を自動化することで、作業ミスは防止できます。
チェックリストの活用
チェックリストとは、作業手順や作業内容を項目にして、レ点を入れることで漏れなく実施しているかを確認するためのリストです。
自分の担当する作業を確認するため、自分で作成するのが前提ですが、同じ作業を行う仲間同士で作成することで効果が高まります。作業によっては、複数の担当者がチェックを入れることもあります。毎回同じチェックリストを使うことが大切で、作業ミスが起こりやすい箇所が見える化するメリットがあります。
また、作業ごとにチェックポイントを設け、指差し確認などを行うのも効果的です。
ミスの見える化
作業ミスを見える化しましょう。チェックリストも見える化の1つですが、ここでは、マニュアルでの見える化を取り上げます。
過去に間違えた箇所や間違えやすい部分にマーカーなどを付けて、注意喚起を促します。間違えた日付や詳細をメモにして記録すると、苦い思い出がよみがえり、失敗を繰り返さないようになります。
過去の失敗をレポートにし、仲間と共有することも有効です。気を付けるポイントを分かりやすく伝えることで、職場全体の意識が向上します。ただし、ミスした人ではなくミスの原因を追求する姿勢を持ち、失敗を隠さずに申告する、ミスに対してマイナスイメージを持たない、といった点に気を配りながら、見える化してください。
ミスの起きにくい仕事環境を整える
整理整頓が行き届いていない仕事環境は、ムダ、ムラ、ムリが生じ、作業ミスの温床となります。使った道具を同じ場所に戻す、資料は見やすく保管する、決めたルールは守るなどの5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底することで作業ミスが起きにくくなります。
仕事環境以外にも、書類の管理、パソコンやサーバー内のメールの管理やフォルダーの整理も忘れずに行いましょう。よく似た名前のファイルがたくさんあると、間違いやすく、どれが最新で有効なのかが分かりにくく、探す時間のムダが生まれます。
仕事に必要なファィルと同じ名前のフォルダーを作成し、日付順に並べ替えることで最新のファィル以外はすべて不要となります。
ミスが起きた作業の業務フロー図を作成する
業務フロー図とは、一つの作業の流れを詳しく図解したものです。長方形やひし形、直線などの図形で作業の最初から最後までの手順を書き出します。同じ作業を行う関係者をできるだけ多く集めて、作業の流れを図にすると、自然と作業手順の標準化を図ることができ、作業ミスが発生した箇所を特定できます。
図で表すと、作業ミスが発生する元となる作業が分かるため、その作業の直後にチェックを行うことで、ミスを防止することができます。
業務フロー図には、いろいろな書き方があるので、比較検討して作りやすい方法を採用しましょう。
作業を自動化する
作業ミスの多くはヒューマンエラーによって引き起こされます。現場で作業ミスをなくすには、人が関わらないようにすることが一番です。作業の自動化とは、これまで人が手で行っていた作業をIoT技術に委ねることです。自分で状況を判断できる産業用ロボットが人の代わりに働くことで、作業に人が関わらなくなり、作業ミスを減らすことができます。
製造業の生産ラインでは、溶接や組立、搬送の工程で自動化が進んでいます。食品業界では、食肉の加工から炊飯、弁当の盛り付けまで自動化されていて、365日24時間稼働しています。
実績班長を導入すれば作業ミスを減らせる
実績班長は、製造業の現場に特化したMES(製造実行システム)で、タブレット1台で全工程を見える化して現場の状況を把握します。多台持ち作業や複数人同時作業、同時オーダー、連続生産での途中出来高なども一元管理できるのが特徴で、会社のニーズに合わせて必要な機能をカスタマイズすることが可能です。
導入すると、作業ミスを防止するための仕組みが実績班長で実現できます。工程管理・見える化ができたとしても、チェックリストや手順書といったものは必要なので、ミスを防止する仕組みを構築することが求められます。作業ミスを事前に感知し、アラートで教えてくれるため、作業ミスが発生することなく、より効率的に工程管理が行えます。
実績班長による作業ミス改善事例
導入企業 | アサヒ飲料株式会社 群馬工場 |
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業種 | 食品 飲料 |
- 【導入前の課題】
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- 現場の声が反映されたシステム作り
- 伝票の電子化
- 手書き作業による記録遅れの発生防止
- 【導入した機能】
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- 電子化による入力文字の読み間違い防止ができた
- チェック、記録遅れが大幅に削減した
- 予防保全ができた
- 現場からの反発がないシームレスなシステム導入が実現した
東京ビックサイトで行われていた展示会(スマート工場EXPO)で、実績班長の製品ブースを見たことがあり、この会社なら導入を進めても大丈夫だろうと導入を決めました。
実績班長はスマホサイズのタブレットで、異常発生直後に入力します。データのチェック、記録遅れが大幅に減りました。導入後のアンケートによると、「アラートが赤く表示されるので、異常時に気づきやすい」「チェック忘れなどの防止になっている」などの前向きな意見が多く見られました。持ち運びもしやすく、使い勝手もいいと現場でも好評です。
まとめ
工場内での作業ミスはヒューマンエラーがほとんどで、さまざまな要因で作業ミスが引き起こされます。生産ラインにおける人の関りを極力減らし、作業ミスを見える化することで、作業ミスの問題は解決できます。現場の声を反映できる実績班長を導入し、システムでミスを防止する対策を実施することで、作業ミス皆無の工程が実現することでしょう。工場の現場における作業ミス問題を解決したいが、改善方法が分からない、といった場合には、お気軽にご相談ください。