設備が少しの時間停止する「チョコ停」。チョコ停は、品質・金銭面などで大きなロスに発展するリスクがあるため「少しの停止だから問題ない」と、考えている方は要注意です。
今回はチョコ停について、その原因やリスク、ロスの計算方法、対策方法を解説。さらに、チョコ停の改善に役立つIoTシステム「実績班長」もご紹介します。
目次
チョコ停とは
チョコ停とは「製造ライン設備などが、チョコっと(少しの間)停止するトラブル」を指します。
製造・生産業における「7つの設備ロス」の1つで「空転ロス」とも呼ばれます。
チョコ停はすぐに復旧できるため、見逃されるケースも多いです。
しかし、チョコ停が重大かつ大規模な故障に発展する恐れもあるため、各現場でしっかりと対策を講じる必要があります。
ドカ停との違い
チョコ停と似た言葉に「ドカ停」があります。実は、両方とも、JIS(日本産業規格)によって定義づけられているため、以下にご紹介します。
定義 | |
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チョコ停 | 設備の部分的な停止又は設備の作用対象の不具合による停止で,短時間に回復できる故障を小故障(通称としてチョコ停)という(※) |
ドカ停 | 設備が生産ラインなどの大規模なシステムの一部となっていて,システム全体を停止に至らしめるような重大又は決定的な故障を大故障(通称としてチョコ停)という(※) |
チョコ停とドカ停の大きな違いは「回復までの時間」です。
チョコ停は、故障や不具合による停止から少しの時間で回復できますが、ドカ停は故障の程度が大規模かつ深刻で回復までに時間がかかります。
(※「JIS Z 8141:2001 生産管理用語 設備管理 番号6108(故障)」より抜粋)
その他のロスとの違い
チョコ停が、製造・生産業における「7つの設備ロス」の1つで「空転ロス」とも呼ばれることは、すでにご紹介しました。
ここでは、7つの設備ロスの内容を知り、チョコ停の内容をより深く知っていきましょう。
ロスの種類 | 定義 |
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故障ロス | 故障により設備が停止することによるロス |
段取り・調整ロス | 生産する製品の変更・調整による設備停止で生じるロス |
刃具交換ロス | 生産機器の刃具交換による設備停止で生じるロス |
立上がりロス | 設備の立ち上げに際して実施する調整で生じるロス |
チョコ停・空転ロス | 一時的な不具合による設備停止で生じるロス |
速度低下ロス | 想定よりも生産スピードが遅いことで生じるロス |
不良・手直しロス | 不良品の発生で、手直しや別の良品製造に要したロス |
上記から、チョコ停(空転ロス)は「大きな故障、製品変更、刃具交換、不良品の発生・手直しなどに起因しない設備の停止」であることが分かります。
チョコ停が発生する主な原因
チョコ停が「大きな故障、製品変更、刃具交換、不良品の発生・手直しなどに起因しない」のならば、どのような理由で設備の停止が起こるのでしょうか。
チョコ停の発生には、主に以下のような原因が挙げられます。
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- メンテナンスや清掃が不十分だった
- 汚れ・削りくずなどが蓄積し、機械が正常に動作しなくなるケースがあります。
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- 製造ラインのバランスが取れていない
- ラインを流す速度、材料を流す数などが適切でないと、引っかかりや詰まりが起き、チョコ停につながります。
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- 前の工程の作業品質にムラがある
- 前の工程の加工作業の仕上がりにムラがあり、不良品や、不良品につながる状態の加工品が流れてくることで、チョコ停の発生リスクが増加します。
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- センサー類に不具合がある
- 経年劣化などで、材料や部品をチェックするセンサー類の認識精度が下がり、ラインの流れが滞ります。
チョコ停が発生することのリスク
チョコ停の発生に対して適切な対策をとらなかった場合、稼働率や品質の低下をはじめ、事故や大規模なロスに発展するリスクがあります。以下、チョコ停が発生することのリスクについて、詳しく見ていきましょう。
稼働率が低下する
チョコ停は、1度の停止時間が短いため、設備の稼働率に大した影響を与えていないように思われているケースもあります。
しかし、チョコ停の時間を合算すると、月単位・年単位でかなりの時間となる場合も珍しくありません。チョコ停の頻度が高くなると、納期の遅延につながる恐れもあります。
品質が低下する
製品の加工中などにチョコ停が発生すると、不良品となったり、廃棄せざるを得ないケースも出てきます。
チョコ停による設備の停止時間が短いとしても、不良品の増加など、製品の品質にダイレクトに影響を及ぼすのです。
事故の原因になる
チョコ停が発生すると、安全上のリスクも増大します。
例えば、急に機械が止まったことにより、思わぬケガが発生する恐れがあります。また、復旧作業において、引っかかりなどを除去した際に残圧などで機械が動き、作業員のケガにつながる危険があります。
大規模なロスに発展する
チョコ停が頻繁に発生する場合、設備の老朽化・故障など、背後に大きな原因がある可能性も考えられます。これに対して適切な対策を講じなかった場合、システム全体の停止につながる大規模なロスに発展する恐れもあります。
大規模なロスは「納期の大幅な遅延」「設備破損による負傷」など、重大事故につながる危険もあるため、ご注意ください。
チョコ停によるロスの計算方法
チョコ停によるロスを計算する際は、あらかじめ調査によって必要なデータを取得しておきます。
具体的には、作業者の動作やトラブル原因の内容・時間を調査員がチェックする「ワークサンプリング調査」を実施し、チョコ停の発生件数・各チョコ停時間を明らかにします。
その上で「通常の稼働率(チョコ停が発生しない場合の稼働率)」「チョコ停が発生した場合の稼働率」を算出し、その差からロスを調べることが可能です。
通常の稼働率(チョコ停が発生しない場合の稼働率)は、以下の計算式で求めることができます。
稼働率 = 稼働時間(負荷時間-計画停止時間-停止ロス時間)÷負荷時間
例えば、ワークサンプリングによって「負荷時間(1日または月間で設備が稼動しうる時間):20時間、計画停止時間(段取り調整などの時間):1時間、停止ロス時間(引き継ぎ・休憩などの時間):1時間」という結果が得られたとします。
この場合の稼働率は「(20-1-1)÷ 20」で、90%となります。
次に、チョコ停が発生した場合の稼働率は、以下の計算式で求めることができます。
稼働率 = 稼働時間 ÷(負荷時間 + チョコ停時間)
上記のワークサンプリングで「チョコ停時間の合計:2時間」という結果も得られていた場合、稼働率は「(20-1-1)÷ (20+2)」で、約82%となります。
つまり、チョコ停の発生によって、稼働率が通常より8%もロスしていることが分かります。
チョコ停の発生を減らすための対策
チョコ停の発生を減らすためには「記録(データ)を取り、目に見える形にした上で、適切な改善策を講じる」ことが必要です。具体的には、以下3ステップの対策を実施します。
- 記録表の作成
- パレート図の作成
- 改善策の立案・実施
記録表の作成
チョコ停の発生を減らすためには、まず「チョコ停の状況」を正確に把握することが必要です。そこでチョコ停の記録を付けていきますが、以下の内容を盛り込むようにしましょう。
- 停止した時間
- 停止が終了した時間(復旧が完了した時間)
- チョコ停の発生理由
チョコ停の発生頻度が高くない場合は、現場作業員が記録する方法で問題ありません。一方、チョコ停の発生頻度が高い場合や、繁忙期などの場合は、調査員を立てて実施する「ワークサンプリング調査」も検討してください。
パレート図の作成
パレート図とは、棒グラフと折れ線グラフを組み合わせた図表です。
以下を見える化できるため、状況の全体像が把握でき、チョコ停のデータ分析と原因の究明に役立ちます。
- チョコ停の発生要因
- 要因ごとの発生件数
- チョコ停の累計比率
詳細な分析には、ある程度の量のデータが必要なので、チョコ停の発生記録などをしっかり実施するようにしてください。
改善策の立案・実施
パレート図の作成後は、改善策を立案・実施します。
改善策は、優先度・緊急度から立案し、実施することがポイントです。
改善策の実施後も、チョコ停の記録は付け続けます。さらに、チョコ停によるロス計算もおこない、改善策の実施前後を比較して、対策の効果を検証してください。
チョコ停の改善を目指すなら「実績班長」がおすすめ
チョコ停の改善を目指すならば「予知保全」「予防保全」が大切です。
予知保全とは、設備の異常の兆候を事前に検知することで、予防保全とは、あらかじめ決めた耐用年数にしたがって設備や部品を実施することを指します。
このような予知保全・予防保全を、IoTとデジタル管理で実現するシステムが「実績班長」です。
チョコ停の改善に「実績班長」をおすすめする理由は以下の通りですが、それぞれ詳しく見ていきましょう。
- チョコ停の改善に実績班長がおすすめの理由
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- 設備の異常を検知・記録できる
- 設備のメンテナンス時期が把握できる
- 古い設備のデジタル化も実現
設備の異常を検知・記録できる
「実績班長」は、外付けセンサーを利用して、様々な設備・機械を含む製造ライン全体をIoT化できます。これにより、チョコ停などの設備異常が自動検知できるようになります。
また、各種センサーを搭載することで、異常原因の速やかな究明にも寄与します。さらに、異常発生前の温度変化などを検知することで、設備の予知保全にも活用可能です。
設備のメンテナンス時期が把握できる
「実績班長」によって取得した設備・機械の情報は、メンテナンス時期の管理にも役立ちます。
例えば、金型のショット数から、メンテナンスが必要となる時期も把握できるようになるため、設備・機械の劣化などが原因のチョコ停・ドカ停を防止することが期待できます。
古い設備のデジタル化も実現
古い設備ではチョコ停のリスクも高まりますが、最新設備への交換が容易ではないケースも多いことでしょう。
そこで、古い設備に対しては万全の監視が求められますが「実績班長」は、古い設備の交換・改造なしでデジタル化を実現し、設備状態のデータが取得できます。
「実績班長」なら、設備や装置のメーカーがバラバラでも、デジタル化して連携できる点も、大きなメリットです。
実績班長の導入事例
「実績班長」の導入は、設備保全につながり、チョコ停・ドカ停の改善にも役立ちます。
最後に「実績班長」の導入事例を見てみましょう。
導入事例:株式会社プラセス
業種 | 製造業 |
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サービス内容 | OA・自動車・エレクトロニクスなどの樹脂金型、 樹脂成形品及びプレス部品の組立販売 |
- 【導入前の課題】
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- 既存システムで頻繁に発生する配線作業の煩わしさ
- 成形機の稼働状況と品番情報の紐付けが不十分
- 【導入後の効果】
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- IoT活用による装置状態のデータの自動収集
- 金型命数の管理による「メンテナンス時期の見える化」
- 流出欠陥ゼロを実現
- ワイヤレス通信の採用で、配線作業の手間を削減
国内外に拠点を持ち、金型設計から組立までの一貫製造をおこなう株式会社プラセス。「実績班長」の導入で、生産実績収集を自動化し、流出欠陥ゼロを実現。金型命数管理による「メンテナンス時期も見える化」と「装置状態の自動収集」により、チョコ停のようなトラブル防止にも役立っています。この他、無線IoT端末の活用が可能となり、従来のシステムで発生していた有線LANの配線作業も削減されました。
まとめ
チョコ停は、生産効率を低下させるだけでなく、長時間の生産ライン停止(ドカ停)に発展する恐れもあるため、早期に適切な対策を実施することが大切です。
しかし、目視による確認・人の手による記録など、マンパワーのみの対策は業務負担を増やし、現場を疲弊させる原因となります。
また大規模な生産ラインでは、マンパワーによる対策には限界があります。
そこで役立つのが「実績班長」のような「IoT活用による設備の常時監視」です。
IoTなら、生産ラインの各種データをリアルタイム収集・自動記録でき、トラブル時の原因究明もスムーズです。
各種データをリアルタイム収集で「現場が見える化」すると、ムダの削減や業務効率化にもつながるため、ぜひ「実績班長」の導入をご検討ください。