QC(品質管理)とQA(品質保証)は、高品質な製品を生み出す上で欠かせない業務です。同じ意味で使われるケースも多いですが、実は違いがあることをご存知ですか。
今回は、ものづくりに携わる全ての人が理解しておくべき「QCとQA」について、意味の違い、各業務を実施する際のポイントを解説。さらに、QC・QA業務をサポートする製造実行システム「実績班長」もご紹介します。
目次
QC(品質管理)とQA(品質保証)の違い
QC(品質管理)とQA(品質保証)は、製品を製造・販売する企業にとって欠かせない業務です。
両者は似た言葉であるため、混同されやすいですが、以下のように「時間軸」「責任」「業務範囲」の3点に違いがあります。
QC(品質管理) | QA(品質保証) | |
---|---|---|
時間軸 | 製品完成まで | 製品の企画段階から販売後まで |
責任 | 製品完成までの品質強化/基準のクリアなどの責任を負う | 製品を利用するお客様(ユーザー)に対しても負う |
業務範囲 | QAに比べて限定的 | 包括的(企画からアフターサービスまで) |
QC(品質管理)とは
QC(Quality Control)とは、製品に対して一定以上の品質をキープするとともに、品質向上に務める管理業務です。日本語では「品質管理」と訳されます。
なお「品質」とは、JIS Q 9000(国際規格・ISO 9000の国内版)において、以下のように定義されています。
- 【「品質」の定義】
- 「本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度
引用:JIS Q 9000
つまり、品質管理とは「製品に対して期待される特性・要求をクリアするための業務」ということができるでしょう。
QCが携わる業務の時間軸は「製品の製造工程」であり、基本的に「製品の製造〜完成品」に対して責任を負います。業務範囲もQAと比較して限定的と言えるでしょう。
品質面の異常を早期に発見するためにも、QCは不可欠です。おろそかにすると品質低下、不良品の増加、スケジュールの遅延などにつながる恐れもあるため、QCを徹底しなければなりません。
主な業務内容
QCの主な業務内容は以下の通りです。
- 材料検査
- 不適合材料/不良品の調査・隔離
- 異常に対する原因究明・改善
- 製品の最終検査
- 品質教育の実施 など
QCの業務では「不良品の発生を抑えること」「品質基準をクリアすること」が大きなミッションです。
なお、国内の品質基準ではJIS(日本産業規格)やPSE(電気用品安全法)、国際規格ではISO9000シリーズの5種類の規格などがあります。
QCの業務は黙々と検査だけをするイメージかもしれませんが、実際は異常に対する原因究明・改善などにおいて、現場からのヒアリングや他部署との連携など多くのコミュニケーションが発生します。
QA(品質保証)とは
QA(Quality Assurance)とは、製品の企画段階から携わり、出荷後まで品質を保証する業務です。日本語では「品質保証」と訳されます。
QAが携わる業務の時間軸は「製品の企画から販売後まで」であり、製品のみならず「製品が市場に出てお客様(ユーザー)の手に渡った後」に対しても責任を負います。業務範囲はQCと比較して広く、包括的と言えるでしょう。
高い顧客満足を獲得し、その向上を目指す上でも、QAは不可欠です。おろそかにすると、クレームの増加、製品使用による事故、取引先からの信頼喪失などにつながる恐れもあるため、行き届いたQAが求められます。
主な業務内容
QCの主な業務内容は以下の通りです。
- 企画・仕様書/規格書の作成
- 材料調達
- 製造
- 出荷
- 市場調査
- 顧客対応(クレーム・リコール対応含む) など
QAの業務は「長期的に品質強化に取り組むこと」が大きな特徴です。QCの業務内容に重なる部分も多く、実際に、QA業務をQCが担う企業も少なくありません。
QAは製品の企画段階から携わり、採用する品質基準(規格)を決めることも業務の1つです。
さらに、品質維持できているかを各工程で見守り、商品出荷後のフィードバックを得ることも重要な仕事となります。
QCのミッションが主に製品に関わるのに対して、QAのミッションは「顧客満足度を高める」「製造現場全体を支える」など、人や環境にも関わっているのです。
製造業のQC(品質管理)・QA(品質保証)のポイント
製造業でQC(品質管理)・QA(品質保証)の業務を実施する際のポイントは、以下の4つです。
- 顧客のニーズを把握する
- PDCAサイクルを回す
- QC7つ道具を活用する
- IE(インダストリアルエンジニアリング)
QAはQCの業務内容とも重なっており、QCがQA業務を実施する企業も少なくありません。そのため、QCとQAは完全に分けて考えず、連携したものと捉え、ポイントを実践すると良いでしょう。
ここからは各ポイントについて、詳しく見ていきます。
顧客のニーズを把握する
顧客ニーズは、QAの品質強化において活用されるため、しっかり把握しておくことが重要です。
QAの品質強化のステップは「製造品質強化」「設計品質強化」の2つに大別できます。
設計品質強化の手段の1つに「QFD(品質機能展開)」があり、そこでは「フィードバックした顧客のニーズ」を設計に反映させることが求められるのです。
顧客ニーズを把握する際は、顧客へのアンケート結果・クレーム情報・購買データなどを利用すると良いでしょう。
PDCAサイクルを回す
PDCAサイクルは特に、QCを円滑に実施する上で不可欠な手法です。
PDCAサイクルは「Plan・Do・Check・Action」の頭文字を取ったもので、それぞれ以下を意味します。
- Plan(計画):目標を明確化し計画立案する
- Do(実行):計画を実行する
- Check(評価):実行した計画を正しく評価する
- Action(改善):評価から改善点を浮き彫りにして次のステップにつなげる
上記のステップを何度も回すことで、改善を繰り返し、より良い品質を目指すことができます。
なお、Check(評価)には、消費者(ユーザー)や市場からの評価も含まれるため、しっかりとAction(改善)や、次のPlan(計画)に反映させることが重要です。
QC7つ道具を活用する
QCの業務を円滑に行う手法として「QC7つ道具」と呼ばれるものがあります。グラフや図でデータを視覚的に表すことで、分析結果の理解を深めたり、情報共有をサポートします。
種類 | 特徴 |
---|---|
グラフ | 折れ線グラフ・棒グラフなどを用いて、全体的なデータの傾向を可視化する |
パレート図 | 折れ線グラフと棒グラフを組み合わせた「パレート図」で、複数の課題と、各項目が占める割合を一目でわかるようにする |
チェックシート | 記録シートで、設定した確認項目・点検の合否をチェックする |
ヒストグラム | データがどのように分布しているか可視化する |
特性要因図 | 結果の構成要因を書き出すことで、問題点を抽出する |
散布図 | 横軸・縦軸のグラフに点を打ち、2つのデータの相関関係を可視化する |
管理図 | 工程データを複数の折れ線グラフで表し、対比して異常を検知する |
QCは管理すべき事柄が非常に多く、状況が見えにくくなる恐れもあるため、上記の7つ道具を積極的に活用して「状況の見える化」に役立ててください。
IE(インダストリアルエンジニアリング)
IE(インダストリアルエンジニアリング)は、QCにおいて、作業工程や作業内容のムダ・属人化をなくす際に役立つ手法です。
IEの手法には、主に以下の2つがあります。
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- 方法研究
- 作業における工程/動作/運搬を分析し、それぞれでムダやロスを発見します。
-
- 作業測定
- 作業・動作の時間を測定する「時間分析」、ムダな非稼働時間などを分析する「稼働分析」などを実施します。
IEを実施すると、各作業工程における状況を見える化できるため、各工程で品質を維持する際にも役立ちます。
製造現場のQC・QAの課題解決は「実績班長」がおすすめ
QCやQAを円滑に実施するためには、製造現場の可視化が不可欠となります。
そんな時に役立つのが製造実行システム「実績班長」です。
「実績班長」は、各種データをリアルタイムに取得して、製造現場を可視化します。
QC・QAの課題解決に「実績班長」をおすすめする理由は以下の通りですが、それぞれ詳しく見ていきましょう。
- QC・QAの課題解決に実績班長がおすすめの理由
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- 入荷から出荷までを一元管理できる
- 既存設備・システムと連携できる
- 品質の見える化が実現できる
入荷から出荷までを一元管理できる
「実績班長」は、製造現場に特化した製造実行システムで、製造に関わる工程をトータルに管理することができます。
具体的には「入荷、在庫・棚卸、投入、連携、製造、検査、出荷」までが一元管理できるだけでなく、各工程をIoT化し、データ収集することで、工程ごとの悩みや課題にアプローチすることが可能です。
一例としては、進捗の見える化・稼働状況の監視・ノウハウのデータ化などを通じて、QC・QA業務をサポートします。
既存設備・システムと連携できる
製造現場にIoT導入する場合、設備の交換や改造が必要となるケースも少なくありません。
一方、「実績班長」は、外付けセンサーを使用するため、既存設備を活かして現場の見える化を実現します。さらに既存のシステムやERPとも連携できるため、コストを抑えてIoT化しつつ、より良いQC・QAを実現します。
品質の見える化が実現できる
「実績班長」は、生産工程に合わせて、リアルタイムに品質情報が収集できます。
これによって、 品質の異常・不良に気付かず、製造を続けるリスクを避けることが可能です。
また、品質情報はデジタル形式で自動収集されるため、紙の検査記録と比較して、調査時間も短縮できます。
さらに、タブレットのカメラで現場の状況を撮影し、検査記録することで、品質保証にリアルタイム連携できる点も大きなメリットです。
実績班長の導入事例
「実績班長」の導入で、より良い品質管理・品質保証を実現している例は少なくありません。
最後に「実績班長」の導入事例を見てみましょう。
導入事例:アサヒ飲料株式会社 群馬工場
業種 | 食品製造・販売 |
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サービス内容 | 各種飲料水の製造、販売、自動販売機のオペレート、その他関連業務 |
- 【導入前の課題】
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- 品質向上のために、データの電子化を進めたい
- 現場の声を反映したシステムの導入
- 【導入後の効果】
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- 電子帳簿への確実な記録が可能に
- 記録やチェックの遅れを削減
- 現場からの受け入れもスムーズ
国内を代表する飲料事業のリーディング企業であるアサヒ飲料株式会社。 全社的な品質向上プロジェクトの一環として、データの電子化を推進するタイミングで、群馬工場にて「実績班長」を導入しました。その結果、特に困難であった「人の手による作業記録」の電子化に成功。品質管理において避けるべき「記録の遅れ・付け忘れ」「文字が判読できない」などの問題がなくなりました。システム導入後のアンケートでも、おおむね高評価でした。
まとめ
QC(品質管理)とQA(品質保証)は、製品の品質を保ち、安全性を担保し、さらなる高品質を目指す上で欠かせない業務です。
QA・QCでは、生産現場や生産プロセスの可視化が不可欠で、そこから課題を抽出し、改善を実行します。
「実績班長」は、そんなQA・QC業務をIoT化でサポート。データの自動取得によって業務負担を軽減するとともに、常に品質を見守り続けます。