帳票や文書を紙に印刷せず、電子化する「ペーパーレス化」の動きが、昨今では活発になっています。しかし、多くの企業でペーパーレス化がなかなか進められずに困っているという声もあります。コロナウイルスの影響によってテレワークが推進され、業務効率の改善が求められる中、ペーパーレス化は企業全体で取り組むべき課題だといえるでしょう。
本記事では、ペーパーレス化のメリット・デメリット、進め方やポイントについて解説していきます。社内の使用媒体の現状をどうにかしたいという方は、参考にしてみてください。
目次
ペーパーレス化とは
ペーパーレス化とは、帳票、会議資料、契約書、見積書など、これまで紙で印刷していたものをデータで共有し、オンラインでの署名・捺印、保管をすることです。紙を減らすことはもちろん、紙資料を扱う際にかかっていた金銭的コスト、時間的コスト、人的コストを減らすことにつながり、業務効率をアップさせる狙いがあります。
日本政府もe-文書法 、電子帳簿保存法などの整備を進めてきており、企業がペーパーレス化に取り組む土壌が整ってきています。一方、多くの企業がテレワークを推進する中で、テレワーク導入実態調査では約80%以上の社員が、「契約書や文書回覧を電子署名で行えるツールや、オンライン決済システムの整備が必要」と感じています。FAXを確認するためや、ハンコをもらうためだけに出社するという非効率的な働き方も見受けられるようです。
ペーパーレス化が進まない理由
ペーパーレス化が進まない理由として「ペーパーレス化を進めるメリットが社員に伝わっていない」という点があげられます。ペーパーレス化を進めるためには、ITツールの整備を行う予算が必要になります。また、これまでの業務ルーティーンを変更する必要もあるでしょう。そのような手間と予算をかけてまで、ペーパーレス化を行う理由が社員に伝わらなければ、いくらペーパーレス化を求めるような通達が流しても、現場に浸透しません。
また、決定権をもつベテラン社員や重役は従来のやり方に慣れてしまっているため、メリットを具体的な現場のコストや時間などの数値に置き換えてプレゼンをしなければいけません。いずれも、ペーパーレス化がもたらすメリットを正確に伝える努力が必要になるでしょう。
ペーパーレス化のメリット
社内のペーパーレス化にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ペーパーレス化を促進するためには、上記のメリットを自分たちの立場に置き換えて具体的に社員に伝えることが大切です。それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
- 【ペーパーレス化のメリット】
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- コストの削減
- 業務の効率化
- 検索が容易に行える
- セキュリティが強化できる
- 遠隔アクセスや共有が簡単にできる
- 環境保護に貢献できる
現在の社内状況と、ペーパーレス化を実現できた場合を比較し、後者の方が社員にとってより良い効果が期待できると社内全体に伝われば、ペーパーレス化への第一歩につながります。ぜひ参考にしてみてください。
コストの削減
文書の印刷をやめることで、会社規模にもよりますが毎月数千〜数万枚の用紙代・インク代の節約につながります。また、電子押印も連携させるとメール上で契約書の受け渡しもできるため、契約書類などの郵送代、印紙代の削減も可能です。プリンターの台数を減らすことも可能でしょう。会議資料もPDF化して、全員がPCやタブレットで閲覧できるようにすれば、会議のための資料印刷も不要です。
FAX文化が根強く残る会社の場合、オンラインFAXを取り入れることも可能です。席を立たずにPC画面上で送付状付きの資料を送ることができます。送付履歴や受信履歴をPC画面上で管理できるため、いつ、誰がFAXでやりとりをしているかも追うことが可能です。
業務の効率化
紙の書類を回覧していて起こりがちである、誰のところでその書類が止まっているのかわからないという事態が以前の形態にあるでしょう。オンライン決済システムを導入すれば、部署ごと、プロジェクトごとに回覧ルートを設定でき、電子署名でそれぞれの都合の良い時間に回覧書類のチェックができます。
提出している側は決済完了の確認のための出社や待たされることもなく、決済する側は社外にいても書類の確認ができるので、業務進捗のスピードが格段にあがります。各個人のアカウントからログインし電子署名するので、手書きの署名よりも信頼性が高く、署名時刻も記録されます。締切がある場合は、時間を守れているかどうかの確認も可能です。
検索が容易に行える
OCRで読み込んだ資料は文字を認識しているため、キーワードを入力することで必要書類をすぐ探し出せます。膨大な紙資料の中から目的の書類を探す手間に比べると、格段に業務効率はアップするでしょう。特に、過去に似たような案件があったから参考にしたいという時には、とても便利な機能です。また、先輩たちの実績を見て学べるため、過去資料にすぐにアクセスできるのは、新入社員育成にも効果的だと思われます。
セキュリティが強化できる
紙資料にありがちな資料の紛失や入れ間違いというミスを防ぐことができます。PDF化した資料にセキュリティパスワードを設定すれば、誤送信してしまった際にも重大なミスにつながる可能性が低くなります。また、資料の保存に関しても、オンライン上で案件ごとにアクセス権限を設定すれば、特定の人しかアクセスできないフォルダを作成可能です。
紙媒体で社内保存している機密書類などは、鍵をかけた棚に収納されることが多いです。しかし、その鍵を所持している人がいないと中身を確認できないなど手間や煩わしさが多いのも事実です。セキュリティ面でもペーパーレス化が効果を発揮することが期待されます。
遠隔アクセスや共有が簡単にできる
書類をオンラインクラウドサービスに保存しておけば、自分はもちろん人へ業務を引き継ぐ際に、何年も前の資料が検索しやすいという利点があります。デスクトップに貼り付けられたままの状態や、整理されていない紙資料で埋もれていると、本当に必要な時にすぐに作業が開始できません。
クラウドサービスは携帯やPCなどさまざまなデバイスからアクセスできるため、社外から必要な資料にアクセスできるのも便利です。資料を取りに行くためだけに会社に一度戻るというようなことも必要ありません。オンライン決済システムなども過去の決済履歴や回覧資料が自動的に残されていくため、過去のプロジェクトの変遷などをいつでも確認できます。
環境保護に貢献できる
2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な開発目標(通称:SDGs)では「15.陸の豊かさを守ろう」ということが謳われています。日本政府も無駄な紙の消費を少なくして、紙の原料となる森林を守っていこうということで整備を進めています。紙消費を減らしていくことで、企業として環境問題に取り組んでいるというイメージアップにもつながっていくでしょう。環境問題に関心が高い人は増えているため、消費者が会社を選ぶ指針の一つになるかもしれません。
ペーパーレス化のデメリット
ペーパーレス化を進めるにあたって、デメリットも把握しておきましょう。リスクを知った上で対策を講じつつ移行していくのが安心です。ペーパーレス化のデメリットには下記のような点が挙げられます。
- 【ペーパーレス化のデメリット】
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- 導入コストがかかる
- 一定以上のIT知識が必要
- 機器障害のリスク
ペーパーレス化を進めるために必要な設備コストはもちろん、それを使いこなせるだけの能力も必要になります。また、機器トラブルが起きた際の対応方法なども社内で決めておくべきでしょう。それぞれのデメリットについて解説していきます。
導入コストがかかる
ペーパーレス化とは、ただ紙での印刷を止めることではありません。オンラインで文書を共有し、異なる場所にいながら会議ができたり、ハンコなしで決済を行ったりできることによって業務を効率化するために行います。これらを行うには、新しいオンラインシステムの購入、タブレットを各社員に配布するなど、初期投資が必要です。ツールの整備を怠ると、便利さや快適さが担保されないため、ペーパーレス化を社員に浸透させるのは難しいでしょう。
一定以上のIT知識が必要
デジタルツインの導入は、付加価値向上の効果も期待できます。従来の製造プロセスでは、まず設計を行い、それを元にプロトモデルを実際に製作する必要性がありました。しかし、デジタルツインを活用することで、デジタル空間上でのシミュレーションが実施できるため、開発期間の短縮やコスト削減や品質改善などが見込めます。
機器障害のリスク
機器トラブルやサーバートラブルが起きると文書にアクセスできなくなります。地震などの自然災害によってサーバーがダウンすることも考えられます。そのような事態に備え、バックアップを定期的に行うことをおすすめします。日本は災害大国といっても過言ではありません。紙文書の場合は水濡れや、火災で消失する危険がありますが、データ化しておけばその心配はありません。適切に対策をしておけば、紙文書での保管よりも災害に強いといえるのです。
ペーパーレス化の進め方
ペーパーレス化を進めるにあたって必要なステップについて解説します。丁寧に進めていかないと、形だけのペーパーレス化になりかねません。下記の通り順を追って進めていきましょう。
- 【ペーパーレス化の進め方】
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- 社内でペーパーレス化について共通意識をもつ
- 電子化に適した書類を見極める
- 導入するサービスやツールを利用する
まずは社内でペーパーレス化について共通意識をもつことが大切です。その後、各部署長などにもヒアリングし電子化したほうが、業務効率の改善が見込める書類を見極めます。ポイントを押さえて社員一丸となってペーパーレス化を進めていきましょう。
社内でペーパーレス化について共通意識をもつ
先に述べたようにペーパーレス化が進まないのは、社員がペーパーレス化のメリットを正確に把握していないことが要因の一つとして考えられます。まずは、通常業務のルーティーンを見直し、ペーパーレス化することで業務効率が上がると考えられる工数を一つ一つリストアップしていきます。
ここで注意したいのは、通常仕事は各部署やチームを横断しながら進めていくということです。一つの部署がペーパーレス化に賛成した業務でも、他部署では反対意見が出ることもあります。どちらの意見も汲み取りながら中和点を探していきましょう。
電子化に適した書類を見極める
企業の書類は、「情報型」と「依頼型」の書類に分けられます。情報型の書類は契約書や設計図、見積書、プレゼン資料、会議資料などが該当します。依頼型の書類は稟議書、請求書、人事書類、精算書などが該当します。特に情報型の書類は、閲覧と先々のために保管しておくことが必要になるため、電子化して保存するのに適しているといえるでしょう。
依頼型の書類はワークフローの設計などツールの導入が必要な面もあり、予算と手間が最初にかかります。進めやすいところから始めたい場合は、会議資料やプレゼン資料のような情報型の書類からペーパーレス化していくのが良いでしょう。
導入するサービスやツールを利用する
ペーパーレス化に最適なサービスとしては、文書管理システム、OCR、クラウド型ストレージなどがあげられます。特に文書管理システムでは、紙ベースではできなかった文書を自動的に破棄あるいは保存まで完結させることができるため、導入する企業が増えています。文書ごとに閲覧権限や決済権限を付与できるため、秘密漏洩のリスクも軽減されます。
スマートフォンやタブレット端末などのツールを各個人に携帯させる際には、あらかじめ社内連絡用のチャットサービス、TV会議用のブレストツールなどを導入すると良いでしょう。会議資料をタブレットで見ているのに、議事録を共有するツールがないため、文書を印刷して配布するということがないようにさまざまな事態を想定することが大切です。
ペーパーレス化を進める時のポイント
ペーパーレス化を進めるにあたって気をつけたいポイントについて解説します。手順通りに進めても、うまくいかないという方は下記の点を踏まえて再度進めてみてはいかがでしょうか。
- 【ペーパーレス化を進める時のポイント】
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- 働くスタッフの意見も考慮する
- 全てがペーパーレス化できるわけではない
- 必ずバックアップは取っておく
- 少しずつペーパーレス化を進める
上記ポイントからペーパーレス化を進めるためには、周囲を急かさず足並みを揃えることが大切だとわかります。また、リスクを受け止めるために事前に備えておくことも、大切な社員や顧客を抱える企業にとって大切だといえるでしょう。それぞれのポイントについて詳しく説明します。
働くスタッフの意見も考慮する
営業が中心で社内にあまりいないスタッフと、社内業務が中心のスタッフでは、業務の進め方や資料の使い方に関してもまるで異なります。時間的な効率や無駄を省くことばかり考えていると、それぞれの社員の仕事に対する効率面や考えを蔑ろにしかねません。
特に顧客対応が中心となるスタッフの場合、これまで紙ベースで対応していたお客様の反応が気になるでしょう。ペーパーレス化することで各スタッフにゆとりができ、より良いサービスをお客様に提供できるという側面をしっかり伝えられるように心がけることが大切です。
全てがペーパーレス化できるわけではない
全ての書類が電子化できるわけではありません。見積書やプレゼン資料、帳票などは、ペーパーレス化しやすいですが、公的機関に提出する書類はまだまだ紙ベースでの提出を求められます。
公的機関とのやりとりが多い企業であれば、電子化する書類と従来通り紙面でやりとりを進める書類とで並行して運用を進めたほうが良いでしょう。無理に全てをペーパーレス化しようとすると逆に業務効率が悪くなることも考えられるので、見極めることが必要です。
必ずバックアップは取っておく
機器やサーバートラブル、自然災害によるインフラの機能不全などが起こった際、オンラインサービスは停止する可能性があります。復旧までに時間がかかることも考え、定期的にバックアップを取っておくことが必要です。各システムにはそれぞれ自動バックアップの機能がついていることが多いため、設定さえしておけば対応できることが多いでしょう。トラブルが起きた時こそ、企業の底力が試される時です。BCP対策としても備えておくべきでしょう。
少しずつペーパーレス化を進める
文書にはペーパーレス化しやすいものとしにくいものがあるため、段階を踏んでペーパーレス化していきましょう。まずは、過去の保管資料や会議資料から電子化するのがおすすめです。取引先に提出する資料や回覧資料などの変更は、他の企業も関連することになるので慎重に進めたほうが良いでしょう。また、一気に変更すると従業員の負担も大きく、反発が起きやすくなります。負担の軽い部分から少しずつ進め、社員の意識を変えていくことが大切です。
ペーパーレス化を進めるなら実績班長がおすすめ
実績班長は、製造現場で作業すると同時にデータ収集を簡素的に行えるシステムです。従来の人員や作業時間、手順などを手書きで記録するのではなく、タブレットをタップするだけで記録を残せるとともに、紙面と同じ情報を画面表示できるため、ぺーバーレス化を実現できます。また、記録をデータ化し、企業ごとに必要なデータを抽出・分析することで、課題解決を目的としたアクションに活かせるシステムです。
「熟練作業者と一般作業者の段取り時間の違いは?」
「品番・担当者ごとに不良率がどれくらいあるか?」
「熟練者は現場でどのような調整をしているのか?」
上記のような疑問を解決したいと思った時に、紙ベースの業務報告書を確認したところで、分析することは難しいでしょう。既存の設備に実績班長のサービス製品を接続しデータ化することで、現場の知見・ノウハウを蓄積していくことが可能になるのです。
実績班長の導入によりペーパーレス化が成功した事例
「実績班長」を導入することで、実際にどのような効果がもたらされるのでしょうか。ここからは、「実績班長」を導入した企業の事例を2つ紹介します。
導入企業 | アサヒ飲料株式会社 群馬工場 |
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業種 | 食品製造業 |
- 【導入前の課題】
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- 現場の社員の声が反映されたシステムとすること
- 全社的な品質向上プロジェクトの一環として伝票が電子化できるシステムとすること
- 手書き作業による記録遅れ等の発生を徹底的に防ぐことのできるシステムとすること
- 【導入後の効果】
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- 電子化による入力文字の読み間違いを防止した
- チェック、記録遅れを大幅に削減した
- 予防保全としての大きな役割を担えた
- 現場からの反発がほとんどないシームレスなシステム導入の実現した
全社的にあらゆるデータを電子化しようと、さまざまなシステム導入を検討されたご担当者様が、東京ビッグサイトで行われた展示会をご覧いただいたことをきっかけに、依頼に至ったようです。検討段階から、現場担当者の方に話し合いに入っていただき、ディスプレイや操作性といった細かい調整を何度も重ねていきました。実際に運用する現場の声を第一に考えた検討プロセスが功を奏したのか、導入時にありがちな反発はなく現場アンケートでも高評価や前向きな改善点があがっていたそうです。
まとめ
ペーパーレス化について、メリット・デメリット、進める時のポイントや導入事例について紹介してまいりました。世界でも有数の紙消費大国である日本において、企業のペーパーレス化は大きな課題となっています。ペーパーレス化がもたらす効果は、私たちの働き方にも影響してきます。紙を必要としなくなれば、働く場所や時間を選びやすくなり、多様なライフスタイルを実現できる可能性がみえてきます。
ペーパーレス化への取り組みに社内のリソースを割けない場合は、外注するという方法もあります。より良いサービスを提供するために、共に伴走してくれるパートナーをお探しの方はお気軽に実績班長へご相談ください。