製造業の現場で発生する「ポカミス」とは、主にヒトによる不注意、誤認などで発生するエラーです。不良品の出荷や製造ラインの不稼働を招く可能性があるため、どの企業もポカミス対策をしなければなりません。しかし、ポカミスが発生する原因は多岐にわたるため、確実に防げていない企業も多いのではないでしょうか。
今回はポカミスの種類や原因、6つの対策について解説します。ポカミスの発生を根本から断ちたい方は、対策を検討するうえでの参考にしてはいかがでしょうか。
目次
ポカミスとは
「ポカミス」とは、製造業の工場や作業現場で多い人的ミスです。ポカミスの語源は、囲碁・将棋でいつもなら考えられない悪い手を打たないよう注意する「ポカヨケ」に由来するといわれています。
ポカミスは以下のような事態を招きかねません。
- 不良品の出荷およびクレーム
- 製造ラインの停止による歩留まり低下、供給トラブル
- 製造現場でのケガ・事故
- 職場における人間関係の悪化
ポカミスは製品の品質を落とし、取引先やエンドユーザーのもとに届けばクレームにつながります。また生産効率の悪化やケガ・事故のもととなり、責任転嫁による人間関係の悪化にもつながるため、基本的にデメリットしかないでしょう。
作業員のちょっとした不注意や誤認で起こるため、人間が手を動かす以上、どの企業でも対策を講じる必要があるのです。
製造業で発生するポカミス一覧
工場など製造業で発生するポカミスの種類について、具体例をあげて紹介します。
作業シーン | 具体例 |
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受入 |
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ピッキング |
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設備オペレーション |
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組立作業 |
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検査 |
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梱包 |
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その他 |
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ポカミスは常に製造業の現場につきまとう問題です。もし業務のほとんどを機械に任せたとしても、その機械を操作するのが人間である限り、ポカミスは起こるかもしれません。
まずは自社で発生しているポカミスの種類について把握しておくことも大切です。
ポカミスが発生し続ける理由
ポカミスが発生し続ける主な理由は、3つです。
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- 原因を特定していない
- ポカミスが発生する原因が分からないため、対策を打つことすらできません。作業員の不注意なのか、作業現場の散らかりなのか、原因が分からないまま同じミスを繰り返してしまいます。
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- ポカミスに気づかない
- 作業員がポカミスを起こしたにもかかわらず、その後の工程で作業員が自力でカバーしたり、他の誰かが指摘することなく対応したりするために問題として顕在化しないケースです。管理者はポカミスの発生に気づかず、対策を打つこともできません。
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- ポカミスの対策をあきらめる
- 種類が多く、さまざまな原因が考えられるため、作業員・管理者が対策をあきらめてしまうケースです。当然ながらポカミスの発生を許せば、ポカミスはなくなりません。
ポカミスが発生する原因
ポカミスが発生する具体的な原因について3点解説します。
- 人的ミス(ヒューマンエラー)
- 作業場・設備など環境によるミス
- ルールの不整備によるミス
人的ミス(ヒューマンエラー)
ポカミスは作業員の不注意や誤認、誤解などによって起こります。
同じ作業を何度でも正確にこなす機械と比べ、人間はその時のモチベーションや集中力、疲労度といった要素に作業の精度が左右されます。悪意のないポカミスもある一方で、業務のストレス発散や怠慢から業務マニュアルを守らず、意図的にポカミスを起こすこともあるかもしれません。
また、作業員間でのコミュニケーション齟齬が原因となるケースも。管理者が作業指示を出しても、その伝達に複数名を介せば、伝言ゲームのように誤った情報が伝わることもあります。誤った情報をもとに作業すればポカミスにつながってしまうでしょう。
作業場・設備などの環境によるミス
作業員を取り巻く「ミスを発生させやすい」環境が原因になるケースです。
例えば、以下のような環境が該当します。
- 現場に工具や部品が散らかっている
- 設備機器の操作が複雑である
- 機械音が大きすぎて、相手の声を聞き取れない
作業しにくい現場は生産効率にも悪影響を及ぼします。作業手順が複雑であれば、それだけミスを誘発させかねません。
ルールの不整備によるミス
作業員や環境の問題ではなく、業務マニュアルなどルールの不整備や、誤った運用方法によっても発生します。例えば作業フローを変更したにもかかわらず、古い業務マニュアルしか用意されていなければ、作業員は対応できません。
また「製品検査で一人当たりがチェックする項目が多すぎる」、「合格基準が分かりにくく、判断が属人化する」など、ルールの設定自体がポカミスを誘発するものになっている場合も注意が必要です。
ポカミスを防ぐ対策6選
ポカミスを防ぐ対策を6点紹介します。
- 原因を解明する
- ルールを見直す
- 作業員を指導する
- 設備投資を行う
- システムを導入する
- 対策後も定期的にチェックする
原因を解明する
ポカミスが発生する原因を解明しましょう。まずは現場で起こっているポカミスをすべて洗い出します。ポカミスが発生した日付・時間、場所、作業員、作業内容など、事細かにまとめることがポイントです。
次にポカミスの起こった原因を探ります。原因を探るとどうしてもヒューマンエラーに目が行きがちでしょう。しかし、「作業場・設備などの環境」や「ルールの不整備」も関係するかもしれません。また、複数の要因が絡みあうケースもあるため、原因を1つに断定することなく、さまざまな観点から探っていくことが大切です。
ルールを見直す
次に原因を踏まえ、「こうした対策をすればポカミスがなくなる」という仮説のもとにルールを見直しましょう。
作業ルールを見直す際には、これまでのルールと現場のギャップを調べておくことも大切です。つまり、作業ルールで指定していたとしても、現場ではいつの間にか作業しやすい方法に変わっている可能性もあります。「作業ルールは現場の状況に合っているか」という視点で、作業員たちの意見も聞きながら変更を検討しましょう。
また、作業ルールを記した文章の分かりやすさも重要です。「専門用語を使いすぎて新人が理解できない」、「読み手の解釈によって作業内容が変わってしまう」といったケースも想定し、誤解のない明確で分かりやすい表現を意識してください。
作業員を指導する
もしポカミスの原因が作業員たちのモチベーション低下に由来する場合は、適切に指導しなければなりません。「なぜこのような作業ルールになっているのか」という理由や、「作業ルールを守ることでいかに効率化できるか」というメリットに触れて説明しましょう。
一方で、モチベーション低下の原因が「長時間労働」や「福利厚生」といった雇用条件への不満にある可能性もあります。作業員を入れ替えるにもコストがかかり、また今後も同じ不満が発生することを避けるため、場合によっては雇用条件の見直しを検討することもあるでしょう。
設備投資を行う
作業場や設備に原因がある場合は、必要に応じて設備投資を行います。
設備投資を検討するのは、以下のようなシーンです。
- 機械が老朽化しており、不具合が起こりやすい
- 部品・部材の種類が多いのに、整理整頓するための棚がない
- 作業スペースが狭く、作業員同士がピッキング中にぶつかる
設備や機械の老朽化はケガ・事故も招きかねません。設備投資にはまとまった予算を必要とするため、慎重に検討する必要はありますが「安全第一」で考えることが大切です。
システムを導入する
手動の「アナログ業務」が多すぎるとポカミスを起こしやすいため、システムの導入により自動化・効率化できる作業を増やしましょう。システムを用いて生産性を高めれば、事業全体で売上・利益のアップにもつなげられます。
システムを選ぶ際には、次の観点から検討するといいでしょう
- 自社の状況に合っているか
- 現状のポカミスを防げるか
- 作業員・管理者が現場で使いやすいか
- セキュリティ対策を講じているか
- 導入後に運用のサポートを受けられるか
システム部門の担当者だけでなく、現場の作業員・管理者の要望も踏まえるとスムーズな導入が可能となります。
対策後にも定期的にチェックする
作業ルールや雇用条件の見直し、設備投資の刷新、システムの導入などの対策を実施して終わりではありません。「本当にポカミスは減ったのか」を検証していく必要があります。定期的に進捗状況をチェックしていきましょう。
もし改善が見られなければ新たに対策を講じなければなりません。また、改善できたとしても、新たな体制で別のポカミスが発生する可能性もあります。人間が関わる以上、ポカミスを根絶することは難しいですが、できる限りゼロに近づけられるよう「カイゼン」を繰り返していくことが大切です。
ポカミスの発生原因を防ぐシステム「実績班長」
「実績班長」とは、製造業の現場に特化した製造実行システムです。あらゆる情報を収集する機能が豊富に備わっています。製造管理、入出荷、在庫、検査などで起こるさまざまな課題をデータとデジタル技術で解消します。
実績班長の導入で、例えば以下の課題を解決できるでしょう。
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- 入荷でのポカミスをなくしたい
- 実績班長とERPとのデータ連携で、入荷予定データをタブレットに表示。事前に当日の入荷予定を把握できるため、適切な人員配置が可能です。
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- 作業員の実績が分からない
- 紙やExcelではなくタブレットに入力してもらうことで、現場の負担をできるだけ抑えます。日報の自動化やペーパーレス化を実現することで、作業員の負担を減らし、ポカミスの低減にもつながるでしょう。
実績班長は、実績収集や進捗管理、在庫管理、品質管理、労務管理など、幅広い業務でDXを押し進めます。
導入事例:気高電機株式会社
実績班長の導入により、業務改善に成功した事例を紹介します。他社の導入事例を、実績班長の導入検討に役立てられるでしょう。
業種 | 電気、機械製造 |
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サービス内容 | 家電製品の「開発から完成品までの一貫したものづくり」 |
- 【導入前の課題】
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- 補助金を活用して予算を抑えたシステムとすること
- 1からの構築ではなく、システムのプラットフォームに装置を連動させて使用できるシステムを検討すること
- IoTを活用して全成型機、周辺設備を接続して成形条件と品質データの視える化を行うこと
- 【導入後の効果】
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- 生産進捗の見える化による稼働率の向上
- データ分析による不良出現傾向の事前検知
気高電機株式会社は、実績班長の導入により「生産進捗を見える化」しました。これまで、ヒューマンエラーのポカミスから「次工程の生産準備が間に合わない」ために発生していた不稼働ロスの削減に成功。また、準備の最適化により休止時間の短縮、稼働率向上にもつながっています。
まとめ
ポカミスは、ヒューマンエラーだけでなく作業場・設備の環境や、ルールの不整備などに起因するケースもあります。原因を一つに決めつけず、さまざまな可能性を検討することが大切です。
ポカミスの対策には、ルールを見直したり、作業員を指導したり、新たな設備やシステムを導入したりするといいでしょう。そして、対策を実施した後も「本当に効果があったか」、「より良い改善策はないか」を仮説検証していくことがポイントです。
また、「実績班長」のようなシステムを導入することで、根本的にポカミスを断つこともできるでしょう。実績収集や進捗管理、在庫管理、品質管理、労務管理などをできるだけ自動化することで、正確に業務を進められるようになります。
実績班長は、業務課題に応じて柔軟なシステムを構築できるため、一度相談してみてはいかがでしょうか。