工場などの生産現場には、生産性の向上や納期対応、無駄の削減、作業員のスキルアップ、品質管理など様々な課題がつきものです。こうした工場における課題を改善する方法として、「見える化」が注目されています。
今回は、工場における見える化について、目的や課題、方法やポイント、導入事例などを詳しくご紹介します。
目次
見える化とは
見える化とは、各工程や作業において問題や進捗状況を一目でわかるように、常に見える状態にしておくことです。実は、見える化は新しい言葉ではありません。従来から、アナログな方法で見える化自体は行われてきました。
一方、現在企業や工場の現場で注目されている見える化とは、インターネットを駆使してこれまで見えなかった情報をよりクリアにし、誰が見てもわかる状態にすることです。
工場においては、製造業に求められる業務効率化や生産性の向上につながる取り組みとして見える化が注目されています。
また、経済産業省が製造業におけるDX化を推進していることも、見える化が重要視されている理由の一つ。日本経済の競争力維持のため、製造業のあらゆる設備やシステムをデジタル化し活用していく必要があるといわれています。
DX化を進めるためには、あらゆるものをインターネットで繋ぐ「IoT」という仕組みが不可欠。このIoT化の第一段階が、「見える化」です。特に工場では、「見える化=IoTの導入」といわれるほど重視されています。
※参考資料:製造業の企業変革力を強化するデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
工場の見える化の目的
工場における見える化には、以下のようにさまざまな目的があります。
- 【工場の見える化の目的】
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- トラブルや問題にいち早く気づく
- ものづくりの生産性を高くする
- 現場での判断や決断を早く正確に行う
- 社員のモチベーションを向上する
- コストを削減する
例えば、ある製造ラインの稼働率を数値にして見える化ができれば、数値の異常によってトラブルの発生や人材配置の適正化などの判断をいち早く行うことができます。また、振動や湿度などのデータを見える化しておけば、設備が停止する可能性を事前に察知でき、リスク回避が可能になるでしょう。
異常に早く気づき事前に予測できれば、無駄なコストの発生を防止することにも繋がります。コスト削減による企業利益の向上や、見える化によるスキルやノウハウの共有は社員のモチベーションにも影響するでしょう。
- 【具体的な見える化の例】
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- 工程ごとに作業効率を見える化
- 電力値を分析して稼働率を見える化
- 工場の消費電力を見える化
このように、工場における様々な工程や場所を見える化し、常にモニター表示などで確認することができれば、改善点や適切な数値を把握できます。そのため、工場全体で無駄になっている部分を発見でき、改善・効率化することが可能となるのです。
工場の見える化の課題
工場の見える化を実施しようとしても、スムーズに行かないことは少なくありません。見える化がなかなか進まない理由として、以下のような課題が障壁になっていると考えられます。
- 【工場の見える化の課題】
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- 古い設備からのデータ移行
- 各部門から上がってくる根拠数値のばらつき
古い設備からのデータを移行
古い設備からのデータ移行が課題となるのは、データがデジタル化されていないからです。
そのため、古い設備からデータを取得するためには、センサーを新たに付けたりカメラを設置したりするする必要があり、コストと時間を要します。設備自体をデジタル対応している新しい設備に取り替えなければならないケースもあるでしょう。
こうしたハードルがあるため、見える化を躊躇してしまい進展しない企業も少なくありません。
各部門から上がってくる根拠数値のばらつき
工場の見える化においては、データを数値化して異常やばらつきを見えやすくします。この数値を「KPI」といいますが、算出は各部門で行うため、会社全体の整合性が取りにくいことも課題の一つです。
例えば、不良品が発生した場合の損失を数値化する場合、ある部署では材料費だけを単純計算し、別の部署では材料費と加工賃、人件費までを含めて計算しているということが起こり得ます。そうすると、どの数値が正しいのか判断がつきにくくなるでしょう。
会社全体で整合性をとるためには、共通の算出方法をすり合わせておく必要があります。そのため、意見をまとめ共通認識を持たせる作業に手間がかかり、ネックになることもあるのです。
工場を見える化する方法
工場の見える化は、以下のようなプロセスで進めていくとスムーズです。
- 【工場の見える化の方法】
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- 見える化の目的を明確にする
- 目的に合わせて必要な数値をデータ化する
- データを分析して標準化する
- 標準化した内容に合わせて教育する
見える化の目的を明確にする
まず、見える化の目的を明確にすることが重要です。例えば、残業が多い部門の場合、「残業時間を○時間削減する」などといったように、具体的な数値を設定します。話し合いを重ねていると、改善すべき方向性が定まらないということもあるかもしれませんが、目的を明確にしておけば、軸がブレることがないため、見える化を効率的に進めることが可能です。
また、目的の明確化はすなわち目標達成までの進捗状況を見える化することにも繋がるため、モチベーションが保ちやすいというメリットもあります。
目的に合わせてデータ化する
目的が明確になったら、次に目的を達成するために必要となるデータを数値化しましょう。どのようなデータを収集すべきなのか社内でよく話し合い、数値の算出方法を共有することが大切です。
社内で数値の算出方法や必要なデータにばらつきがあると、データの信頼性を判断しにくくなるので、目的に合わせてデータ化することが肝心といえるでしょう。
データを分析して標準化する
次に、集めたデータを分析し、基準値を割り出しましょう。誰がやっても一定の数値が出るよう標準化するのです。
具体的には、プロセスを文章にして記載する、あるいは動画を制作するなどして、共有するといいでしょう。ポイントは、成功した場合だけでなくエラーが発生した時にどう判断すべきか、誰でも対処できるようにしておくことです。
標準化した内容に合わせて教育する
データを標準化したら、標準化した内容を現場に公開し、理想的なプロセス通りに実施できるよう教育を行います。現場でやってみて不備があれば、随時修正していきましょう。修正を重ねていくことで徐々に目標達成に近づきますし、作業の属人化の解消にも繋がります。
このように、見える化はただ進捗状況の確認やトラブル感知だけでなく、各工程や作業において目標を定め、着実に改善していくためにも有効な方法です。
工場の見える化のポイント
工場の見える化を進める際は、以下のポイントに注意しながら進めるといいでしょう。
- 【工場見える化のポイント】
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- 数値の取得方法を常に見直す
- 見える化と見せる化を混同しない
数値の取得方法を常に見直す
目的を達成するために必要なデータの数値の算出方法が適切かどうかは、実際に運用しながら検証していく必要があります。目的が達成できない原因には様々なケースが想定されるため、試行錯誤しながら数値の取得方法の信頼性を高めていくことが大切です。
ただ漫然と数値を取得しているだけでは、数値はクリアしていても不良品数が減らない、残業時間が減らないといった本末転倒な事態に陥ってしまい、見える化に取り組んでいる意味がありません。常に見直しながら確度を上げていきましょう。
見える化と見せる化を混同しない
見える化は目的を明確にし、目標を達成させるための手段です。しかし、見える化がいつのまにか手段ではなくゴールになってしまうケースも少なくありません。そうすると、見える化ではなく「見せる化」になってしまい、目的と手段が逆転してしまいます。あくまでも、見える化したデータを活用することが目的であることを忘れないようにしましょう。
大切なのは、収集したデータを正しく活用し、作業を効率化したり、無駄を削減したりして費用対効果を上げることです。
工場の見える化は実績班長がおすすめ!
工場の見える化を進める際には、実績班長の導入がおすすめです。実績班長なら、ネックとなり得るポイントもしっかりカバーできるため、スムーズに工場の見える化が進められます。
- 【実績班長が工場の見える化におすすめの理由】
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- 古い設備にも対応できる
- 多種多様なデータの収集ができる
- 100社100様の提案ができる
古い設備にも対応できる
古い設備からデータを取得するためには、新たなツールや設備の買い替えが必要となるケースもあり、そのことが理由で見える化が進まない工場や企業も少なくありません。
その点、実績班長なら、多様なセンサーや専用ツールを用意しており連携が可能なので、設備の新旧に関係なく現場のあらゆるデータを取得できます。
多種多様なデータの収集ができる
実績班長は、多種多様なデータを集めることが可能。例えば、振動や傾き、音、レーザー、画像、温度、流量、回転数、光などのデータです。
データ化は難しいと考えられがちなものであっても、実績班長ならデータ化が可能です。目的達成のために必要なデータを、妥協することなく追求し、収集できます。
100社100様の提案ができる
工場や現場によって、困っていることや課題も違いますし、使っている設備や作業員のスキルなども100社あれば100様です。そのため、単にお仕着せのシステムを導入しただけでは、適切なアプローチなしに思うような成果は出せません。
実績班長なら、生産現場経験者のコンサルタントや経験豊富なエンジニアが、現場の課題ごとに適切なアドバイスをすることが可能。また、機能のカスタマイズが可能なので、最も適した方法で課題を改善できる点も魅力です。
実績班長の導入により業務効率が向上した事例
導入企業 | 新協技研株式会社 |
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業種 | 部品加工(自動車、オートバイなど) |
- 【導入前の課題】
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- 作業日報の活用ができていない
- 現場で改善できることから取り組みたい
- 【導入後の効果】
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- データを活用できるようになった
- 社員の改善意識が変化した
- 設備の稼働時間が120時間/年減った
- 不良品の発生を100万円単位で削減できた
工場のIoT化が注目される中、まだまだ現場で改善できることがあるのではないかという疑問を持っていた経営者様。改善したい部分を明確にし、判明した課題に対して真摯に向き合ってくれる業者を探していたところ、実績班長に出会いました。
常に課題を見つけ改善し、試行錯誤を繰り返したことで設備の稼働時間を1年で120時間削減でき、さらに不良品の発生が100万円単位で削減されるなどといった効果を実感。また、一連の取り組みによって、最初は無関心だった従業員に改善意識が芽生えるなど、想定外の効果も得られたということです。
まとめ
工場の見える化は、現在ではIoT化への道のりとして通らなければならないプロセスであるという認識も強くなってきています。ただし、工場の見える化はゴールではありません。目標を達成するための効果的な手段です。
設備が古いことや数値の算出方法、活用方法など課題にぶつかるケースも多いですが、実績班長ならこうした課題をカバーすることが可能。経験豊富なスタッフによる支援も充実しているため、安心して活用できるでしょう。工場の現場における課題を解決したいが改善方法がわからない、といった場合には、お気軽にご相談ください。