「なぜなぜ分析」はトヨタ自動車が考案したフレームワークで、現場でおこる事象の根本的な解決に効果的です。しかし、方法を間違うと効果が見られないため、導入しても途中でやめてしまうケースがよく見られます。
この記事では、なぜなぜ分析の手順と注意点について解説しています。
「なぜなぜ分析を詳しく知りたい」「以前導入したがうまくいかなかった」という現場担当者の方は、ぜひ最後までご一読いただき、参考にしてみてください。
目次
なぜなぜ分析とは
なぜなぜ分析とは、発生した問題の根本原因を洗い出すための手法です。
最初に考案したのはトヨタ自動車といわれており、トヨタ生産方式の一環としてよく知られるようになりました。
なぜなぜ分析では、発生した問題に対して「なぜ起きたのか」を5回程度深掘りして最終結論を導き出します。導き出された結論に対して、問題点の再発防止や具体的な改善策を考えるのが基本的な進め方です。
思い込みや勘違いで起こるミスを防ぐため、なぜなぜ分析で深掘りする内容は論理的な考え方で掘り下げることが求められます。
なぜなぜ分析の事例
なぜなぜ分析は、製造業で使われることが多く見られます。
大野耐一氏の『トヨタ生産方式-脱規模の経営をめざして』という著書の中で、なぜなぜ分析の例として「なぜ機械が止まったのか」の分析方法が例題として取り上げられています。
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- なぜ機械が止まったのか
- →オーバーロードがかかり、ヒューズが切れたから
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- なぜオーバーロードがかかったのか<
- →軸受け部の潤滑が十分でないから
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- なぜ十分に潤滑しないのか
- →潤滑ポンプが十分くみ上げていないから
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- なぜ十分にくみ上げないのか
- →ポンプの軸が摩耗してガタガタになっているから
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- なぜ摩耗したのか
- →ストレーナー(濾過器)がついていないので、切粉が入ったから
- 解決するための対策
- →ストレーナーを取り付ける
参照:大野耐一著 『トヨタ生産方式-脱規模の経営をめざして』
このように、表面上の問題解決にとどまらず、深掘りによって根本的な解決策へ導いていきます。
また、なぜなぜ分析は製造業だけはなく「営業成績」「事務作業の改善」「交通事故」など、原因追及と根本的解決が必要な場面において幅広く利用可能です。
なぜなぜ分析のやり方・手順
なぜなぜ分析は、次の手順で進めていきます。
- 【なぜなぜ分析の手順】
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- 課題の定義・事象の設定
- なぜを5回繰り返して原因を特定
- 解決策の決定
課題の定義・事象の設定
まずは、分析の対象となる課題を設定することから始めます。
取り上げる事象については、抽象的な内容ではなく具体的に設定することが大切です。
【事象の設定例】
よい例 | 悪い例 |
---|---|
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上記の「悪い例」のように、抽象的な課題では複数の解釈が可能なため、具体的な解決策へつなげられません。具体的な解決策を導くには、より具体的な課題を定義するようにしましょう。
なぜを5回繰り返して原因を特定
設定した課題や事象に対して、生じさせた要因を順にあげていきます。要因が複数考えられることはよくあるため、一つに絞って掘り進める必要はありません。思いつく限りすべてリストアップして、並行して掘り下げることで複数の真因(真の原因)へつなげられます。
要因のリストアップ時にはでたらめに出すのではなく、事象の起きる原因として考えられる内容とするのが基本です。その要因が元で事象が発生したという、因果関係がはっきりしているものを出すことが求められます。
掘り下げる回数は、5回と決められているわけではありません。一般的に掘り下げを5回繰り返せば真因にたどりつくとされているため、5回と設定されて実施されることが多くなっています。
解決策の決定
何度かその手順を繰り返し、設定した事象の真因と思われるところまで導けたら、真因に対する具体的な対策を考えていきます。
考えられた対策を実施することで本当に問題解決になるか、個人に依存するような解決策になっていないかなどを考慮するため、客観的な判断が求められます。
掘り下げる段階で要因が枝分かれして複数の解決策が見つかった場合、それらすべてを仮の対策として実証していき、真因を検証していくとよいでしょう。
なぜなぜ分析で失敗しないコツ
なぜなぜ分析を実施するのは、それほど難しいことではありません。しかし、方法を誤ると適切な解決策にたどり着かない可能性があります。ここでは、なぜなぜ分析で失敗しないコツを4点紹介します。
- 【なぜなぜ分析で失敗しないコツ】
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- 問題の定義を具体的にする
- 原因と結果がつながるように論理的に考える
- 1つの事象に対して1つの要素だけ挙げる
- 現場の状況に即した解決策を決定する
それぞれについて、詳しく説明します。
問題の定義を具体的にする
問題定義を具体化するのは、なぜなぜ分析を実施するにあたって基本的な考え方です。
抽象的で解釈がいくつも考えられる事象を定義すると、掘り下げる要因が正しく求められません。
たとえば「売上が低かった」という問題定義では、「いつと比べて悪いのか」「全体の売上か個別の商品か」「金額はいくら下がったのか」など、考えられるポイントが複数あり、何を掘り下げるべきかが曖昧になります。
「先月の売上と比べて、Aという商品が目標金額に対して10%下回った」というように、具体的であればあるほど具体的な結論を導き出しやすくなるでしょう。
原因と結果がつながるように論理的に考える
事象を掘り下げて考える過程において、出される要因が「結果に対する直接の原因」の関係になっているか注意しながら進めます。
事象に対して出される要因が原因とはかけ離れている場合、論理的に破綻してしまい真因へはたどり着けません。また、つながりを考慮せずに飛躍した要因を出すと、取るべき対策が変わる可能性があります。
たとえば「機械が止まった」という事象に対して「作業者はミスが多い」という要因を出したとします。しかし、作業者の資質は機械が停止する事象とは関連性がありません。また「機械内部が摩耗していた」という要因であれば、機械が止まった事象に対しての要因としては途中の検証が抜けており、論理が飛躍しています(機械の停止は摩耗が原因ではない可能性がある)。
事象に対しては、要因の抜け漏れがなく慎重に書き出していくことが大切です。
1つの事象に対して1つの要素だけ挙げる
1つの事象について2つ以上の要素を原因として考えると、分析結果が抽象的になってしまいます。
たとえば「出荷時に不良品が入っていた」という事象に対して、「マニュアルが整備されておらず、複数人でのチェックができていない」という要因では、1つの要因に2つの要素が入っているため問題があります。
上記の場合であれば「マニュアルが整備されていない」「複数人でのチェックができていない」と要素を2つに分けて、それぞれについて掘り下げていくようにすることが必要です。
複数要素を入れて掘り下げを進めると抽象的な答えとなり、具体的な改善案とならない可能性があるので注意しましょう。
現場の状況に即した解決策を決定する
事象の定義と解決方法については、現場の状況を考慮することが大切です。
現場検証をせずに机上で分析を進めるだけでは、実情に沿った解決策とならず、絵に描いた餅となる可能性も否めません。
たとえば「現場の残業時間が多い」という事象に対して「作業工程を減らす」という対策を出したとしても、現場から見れば減らせる作業はなく、実現できない解決策となっている可能性があります。
なぜなぜ分析を進める場合は、現場の状況を確認して再現性の高い解決策を提案できるようにしましょう。
なぜなぜ分析は意味がない?
なぜなぜ分析は、問題の真因を発見するために効果的なフレームワークです。しかし、使い方によってはなぜなぜ分析が意味をなさないケースがあります。
なぜなぜ分析は、起こった事象を解決するための原因を導き、仕組みを再構築するのに役立てるものです。しかし、掘り下げる過程の中で、原因が個人の吊し上げへすり替わってしまうことがよく見られます。
たとえば「機械が故障した」という事象に対して、「〇〇さんがマニュアルを守らなかったから」という要因を落とし込むことがよく見られます。このケースであれば、なぜマニュアルを守れなかったかの仕組みにフォーカスして掘り下げなければ、なぜなぜ分析は意味を持ちません。
なぜなぜ分析では現実を冷静に判断し、原因を属人化しないように気をつけることが非常に重要です。
製造現場の改善には実績班長がおすすめ
「なぜなぜ分析で現場の問題を解決したい」とお考えの企業担当者の方は、実績班長の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
実績班長の導入によって細かい作業データの収集が可能となり、現場作業の見える化が容易です。また、工程内で複数作業が発生する場合でも、作業単位に分けた実績収集を実施します。
そのため、工程のどの部分で問題が発生しているのか早い段階で把握でき、なぜなぜ分析の事象特定がしやすくなります。実績班長では在庫・品質・労務・原価の管理もできるため、さまざまな方向から原因を特定することも可能です。
ご相談は無料となっていますので、企業担当者の方はお気軽にお問い合わせください。
まとめ
なぜなぜ分析はトヨタ自動車において考案されたフレームワークで、事象を何度も深掘りすることによって真因を究明できます。ただし、取り組み方を誤ると根本的な解決につながらない可能性も否めません。思い込みや個人の吊し上げにしてしまわないよう、論理的に進めることが求められます。
なぜなぜ分析を論理的に進めるには、具体的なデータも役に立ちます。システム導入によって、各種データの収集が可能です。なぜなぜ分析で組織改善をはかるため、システム導入を検討してみてはいかがでしょうか。