新しい技術・システム導入の検証プロセスである「PoC( ピーオーシー/ポック)」。事前に実現可能性や導入効果を知ることができるため、ビジネス上の意思決定に役立ちます。
今回はPoCを実施する流れ、メリット、注意点、実施する際のポイントを解説。 さらに、製造現場のデジタル化に役立つIoTシステム「実績班長」もご紹介します。
目次
PoCの意味とは
PoC(Proof of Concept)とは「コンセプト(概念)の実証」を意味します。PoCを実施する目的は、以下の2点です。
- 新しい技術/アイデア/コンセプトなどの実現可能性(導入可能性)を見極める
- 新しい技術/アイデア/コンセプトなどの実現・導入で生まれる、効果・効用を判断する
製造業ではあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、IT分野ではスラングができるほど有名な言葉です。
PoCは、IT分野では「セキュリティ構築/新システム導入の際の検証」「プロダクト開発における運用検証」など、幅広く活用されています。
医療分野では「新薬の安全性・効果の検証」、 映画業界では「CG等の新技術でストーリーを表現・再現できるかの検証」など、PoCは様々な分野・業界で利用されています。
製造分野では、小規模な開発・製造を通じた「開発・製造過程やコストの事前確認」などに利用されるケースが多いです。
なお、PoCは「実証実験」と混同されやすいですが、本来は異なる意味です。PoCは「実現可能性の検証」が主目的なのに対して、実証実験は「課題・問題点の検証」が主目的となります。
また「プロトタイプ」と混同されることもありますが、プロトタイプは一般的に「試作品を完成品に近づける工程」を意味します。PoCで、実現可能性や効果・効用を見極めて、はじめてプロトタイプの工程に進むことができるのです。
PoCの流れ
PoCの大まかな流れは「目的やゴール設定」「実施内容の決定」「検証の実施」「得られた結果の評価」の4ステップです。
各ステップで留意すべきポイントがあるため、以下で詳しく見ていきましょう。
目的やゴール設定
PoCの目的が、わかりやすく明確でないと「PoCの実施そのものが目的/ゴール」となる恐れがあります。そのため、以下のような点を明確にしておきましょう。
- なぜ実施するか
- どのようなデータ効果を得たい
- どのようなデータが必要となるか
また、ゴールについても「成功の基準」を明確に定義付けておくことが望ましいです。クライアントがいるプロジェクトの場合、事前のヒアリング結果をもとに、成功の基準を決めておくと良いでしょう。
実施内容の決定
PoCの目的・ゴール設定ができたら、以下のようなポイントから実施内容を決定していきます。
- 検証の対象
- 検証の方法(データの収集方法)
- 検証に必要なもの
- 検証の範囲
- 検証の進め方
- 検証する状況・環境(PoC環境)
- 検証プロジェクトにかかる工数・期間
PoCの実施内容については、開発者視点に偏らず、ユーザー(現場)視点を意識することで、より具体的な内容となり、成功の可能性を高めることも期待できます。
検証の実施
PoCの実施内容が決定した後は、実際に検証を行います。
PoCは限られた予算内で複数回実施することもあるので、プロダクト作成の際は、目的・ゴール達成に必要な「最低限の機能」のみを開発します。
また開発したプロダクト・導入するシステムは、実際の現場で、対象ユーザー全員に利用してもらい、評価や意見を聞くことが望ましいです。客観的な評価を可能な限り多く得ることで、高精度の検証が実現します。
得られた結果の評価
PoCで得られた結果は、以下のようなポイントから厳正に評価します。
- 設定した目的・ゴールが達成できたか
- 数値・技術面から見た実現可能性はどのくらいか
- PoC実施後に覆った仮説はあるか
- PoC実施後に気づいた新たな課題・問題点はあったか
- ユーザー(現場)からの評価はどのようなものか
- クライアント・投資家からの評価はどのようなものか
PoCで得られた結果が設定した基準を満たした場合は、本格的な開発・導入を検討します。設定した基準を満たさなかった場合は、PoCで得られたデータや課題を、次のPoCで活かしてください。
PoCのメリット
PoCは、新しい技術・システム導入に際して、実現可能性や導入効果を知ることができます。
それによって、具体的にどのようなメリットが享受できるのでしょうか。
ここからは、PoC実施の4つのメリットについて見ていきます。
開発リスクの低減
開発に際しては、想定とは異なる「コスト・工数の増大」「開発期間の長期化」「ユーザーからの低評価」などの諸問題が発生するリスクが、常にあります。
そこで、PoCを事前に実施して各種データやフィードバックを得ることで、多角的に実現可能性を検証します。失敗のリスクを低減した状態で、本格的な開発がスタートできます。
無駄な開発コストが明らかになる
開発後に、ユーザーや社会のニーズとは異なることが判明した場合、開発コストが無駄になってしまいます。
PoCを事前に実施することで、ユーザーや社会のニーズが明確化し、方向性も定まることから、思い込みで開発をスタートすることが避けられます。また、開発・製造プロセスも事前にチェックできるため、コスト・工数のムダも削減できます。
投資家など周囲からプロジェクトへの注目を集めやすくなる
PoCを実施して、新商品・新サービスの実現可能性を示すことで、周囲からの注目を集めることも期待できます。
具体的には、投資家から注目されて出資が集まりやすくなったり、業務提携を打診されるなどの可能性も考えられます。また、メディアで取り上げられるなどして、消費者やメディアから注目を集めた場合、広告・宣伝効果を得ることができます。
検証結果を費用対効果の判断に応用できる
アイデア・製品・サービスが優れており、実現可能であっても、費用対効果(コストパフォーマンス)に見合わないケースがあります。
PoCの検証結果は、費用対効果を見極める際にも役立つため「開発コストの削減」「プロジェクトの中止」など、様々な可能性を考慮した上で、どうすべきか判断することができます。
PoCの注意点
小規模な検証で開発リスクを低減し、周囲からの注目や理解を得ることも期待できるPoC。
このように多くのメリットを持つPoCですが、PoCに際しては「PoC疲れ」「PoC貧乏」と呼ばれる状況に陥らないよう、注意しなければなりません。
PoC疲れ
PoCは、あきらめず検証を繰り返すことで、成功の糸口が見つかる可能性があります。
一方、検証を繰り返しても「思った結果が得られない」「次の段階に進めない」「事業化に繋がらない」といった状況に陥り、PoC作業の負担だけが増大し、現場が疲労するケースもあります。これが「PoC疲れ」です。
PoC疲れの対策としては、適切なマネジメントが不可欠です。一例としては「技術面の課題」「事業化に向けた課題」を分け、それぞれに責任者やチームを割り当てる方法が考えられます。
PoC貧乏
いたずらにPoCを繰り返す状況は、現場を疲労させるだけでなく、時間やお金の消費にも繋がります。これが「PoC貧乏」です。
PoC貧乏の原因の1つには「明確な目的・ゴールが設定できていなかった」ことが考えられます。
あらかじめ明確な目的・ゴールが設定できていないと、PoCの実施そのものが目的となる恐れがあるため注意が必要です。
PoCを行なうときのポイント
「PoC疲れ」「PoC貧乏」に陥らず、PoCから有益な検証結果を得るためには、以下の4つのポイントをおさえておきましょう。
小さく始める
PoCは小規模でスタートし、可能な限り規模を広げないことが理想です。PoCを大規模にスタートすると、以下のような問題が発生します。
- 準備に時間がかかる
- 現場の業務負担が増大する
- 検証コストが大きくなる
- 優先度の高くない付加価値・機能をつけることで、評価すべきポイントが分かりづらくなる
PoCを実施するメリットの1つが「コスト削減」です。しかし、PoCの規模が大きくなるほどコストが増え、メリットが失われていきます。
実際の運用環境と同じ条件で行なう
PoCは、実際の導入環境で実施することが望ましいです。
際とは異なる環境でPoCを実施し、ポジティブな結果が出ても、正確な評価・判断が難しくなります。そのため、社内外実からの理解を得ることも難しい可能性もあります。
実際の導入環境でPoCを実施することができない場合は、導入環境に似た仮想環境を作り、データを取得するようにしましょう。
PoC自体を目的とせず成功につなげる意識を持つ
すでにご紹介したように、明確な目的・ゴールが設定できていないと「PoCの実施そのものが目的」となる恐れがあります。
PoCは、あくまでも検証プロセス(手段)である点は忘れないようにしましょう。
また、PoCの成功を「開発・導入に必要なプラスの結果を得ること」と設定すると、マイナスの結果ばかり出た場合「PoC疲れ」「PoC貧乏」に陥る恐れがあります。
PoCの成功は「適切な検証結果を得ること」であり、仮に「開発・導入は避けるべき」という結果が出ても、リソースの浪費が事前に防げたという意味で「PoC成功」と言えます。
外注に頼りきらない
PoC疲れの防止策として「PoCの一部を外注する」というのは簡単かつ有効な方法です。
ただし、外注に頼り切ることは避けましょう。
特に、新技術やシステム、PoCそのもの(PoC実施の目的や実施方法)への理解が足りないために「外注に丸投げする」と、プロジェクトの失敗原因ともなり、社内にナレッジも蓄積しません。
対策としては、PoC担当者が、勉強会の開催や外部講師を招いたセミナーなどを通じて、新技術やシステム、PoCへの理解を深めていきましょう。
実績班長なら製造現場のデジタル化が可能
現在、DX化・IoT化など、製造現場のデジタル化に取り組む企業が増えています。PoCで「自社の製造現場のデジタル化が実現可能」と評価できたら、目指す効果に合わせて、最適なシステムを導入しましょう。
「実績班長」は、古い設備を含む製造ラインのIoT化が可能な、パッケージシステムです。あらゆるデータをリアルタイムに収集することで、製造現場を見える化。業務効率化・業務負担の軽減などに寄与します。
「実績班長」は、以下のようにライセンスが機能ごとに分かれており「必要な時に必要な機能を導入できる」のも、大きなメリットです。
- 【実績班長のライセンス機能】
- 第1ステップ
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- 実績収集
- 製造指示
- 作業者管理
- 工程管理
- 第2ステップ
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- 在庫管理
- 第3ステップ
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- 品質管理
- トレーサビリティ
「実績班長」は、すでに多くの企業で導入されているため、これから製造現場のデジタル化に取り組む企業はぜひ、ご利用をご検討ください。
まとめ
PoCは、新しいアイデア・技術の実現可能性と、コスト・効果が事前に検証できます。開発リスク・コストを低減し、確信をもって開発・導入が進められるように、PoCを積極的に活用してください。
PoCは小規模に実施することが基本ですが、機能ごとにライセンスが分かれた「実績班長」も、スモールスタートが可能です。自社にとって必要な機能を必要な時に導入できますので、「実績班長」で無理なく、自社の製造現場のデジタル化を実現しましょう。