製造業において、生産性の向上や業務改善は大きな課題です。しかし、何の指標もなく業務効率UPを目指すことは難しいでしょう。
そこで重要になるのが「タクトタイム」や「サイクルタイム」です。本記事では、タクトタイムの定義やサイクルタイムとの違い、サイクルタイムを短縮して生産性を上げる方法などについて、成功事例も含めて紹介します。
目次
タクトタイムとは
タクトタイムとは、「ひとつの製品を作るのにかけられる目安時間」のことです。ドイツ語で指揮棒を意味する「タクト(Takt)」に由来しており、生産のリズムやピッチを決める基準値ともなることから、別名「ピッチタイム」とも呼ばれます。
製品の生産依頼を受けたら、まずは「いつまでに、何個作るのか」を明確にします。期日までに決められた個数を生産するために、工場の稼働時間なども踏まえて、1日あたりどのくらい製造しなければならないのかを計算します。最終的に、「1個製造するのにどれくらいの時間をかけられるのか」という目安を算出したものがタクトタイムです。
- 【タクトタイムの計算方法】
- 必要な生産数÷納期までの実稼働日数=1日に必要な生産数
タクトタイム=1日の実稼働時間÷1日に必要な生産数
より正確な時間を把握するため、休憩時間などを含まない実稼働時間で算出する点に注意しましょう。
サイクルタイムとの違い
サイクルタイムとは、「ひとつの製品を作るのに実際にかかる時間」のことで、実際の工程開始から完了までの1サイクルにかかる時間を指します。タクトタイムが顧客からの注文に応えるための目安時間であるのに対し、サイクルタイムは生産を中心に考えた1作業サイクルあたりの実測時間です。
サイクルタイムは、目安であるタクトタイムに近づけることが理想的であり、両者の数値に差がある場合は近づけるために改善の余地があるといえるでしょう。
- 【サイクルタイムの計算方法】
- サイクルタイム=実稼働時間÷実際の生産数
サイクルタイムとタクトタイムの関係性
サイクルタイムとタクトタイムの関係性により、生産や在庫の状況に以下のような影響があります。
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- タクトタイムとサイクルタイムが同等の場合
- ニーズに合わせて必要な個数を効率良く生産できている、理想的な状態です。
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- タクトタイムがサイクルタイムより長い場合
- 目標よりも速く必要な数を生産できている状態です。過剰在庫を抱えてしまう恐れがあるため、受注を増やす、稼働を減らすなどの調整が必要となります。
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- タクトタイムがサイクルタイムより短い場合
- 需要に対して必要な数を生産できていない状態。生産能力が目標に追いついていないため、納期遅延や欠品につながる恐れがあります。生産効率を上げ、サイクルタイムを短縮する必要があるでしょう。
「サイクルタイム=タクトタイム」というのが理想的のため、両者をできるだけ近づけられるよう工夫するといいでしょう。
リードタイムとの違い
リードタイムとは、「発注から納品までのすべての工程にかかる時間」のことで、製造工程そのものにかかる時間だけでなく、資材が到着するまでの待ち時間や検品にかかる時間など工程間の滞留時間も含まれるのが特徴です。
製造業においては、以下のように要素ごとのリードタイムが用いられます。
- 調達リードタイム:生産に必要な材料を発注してから受け取るまでの時間
- 生産リードタイム:生産開始から生産完了までの時間
- 納品リードタイム:受注してから商品を出荷・配送・納品するまでの時間
サイクルタイムを短縮してタクトタイムに近づける方法
製造業において、生産が追いつかず納期の遅延や欠品が発生してしまうことは大きな問題となります。こうした事態を回避するためには、サイクルタイムを短縮し、タクトタイムに近づけることが大切です。ここでは、サイクルタイムを短縮するための方法を紹介します。
- 【サイクルタイムを短縮する方法】
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- 5Sを徹底する
- ボトルネックを改善する
- 各工程の進捗を見える化する
5Sを徹底する
生産過程において必要なものが明確に整理され、トラブルを起こしにくい清潔な状態を保つことで生産効率が上がり、サイクルタイムの短縮につながります。
5Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」のことで、具体的には以下のような行動が挙げられます。
整理 | 必要なものと不要なものを分けて、不要なものを処分する |
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整頓 | 必要なものをすぐに取り出せるよう、置き場所や置き方を定める |
清掃 | 作業場や機械を定期的に点検し、清潔な状態を保つ |
清潔 | 汚れのないきれいな状態を維持する |
しつけ | 決められたことを正しく実行できるように習慣づける |
ボトルネックを改善する
ボトルネックとは、「生産能力が低いために作業が詰まってしまい、全体の生産効率を下げている工程」です。ワインボトルのように、瓶(ボトル)の首(ネック)がボディよりも細くなっていると、中の水がその部分で詰まり、外に流れ出る水量が制限されることに由来しています。
ボトルネックがあると全体の生産性にそのまま影響するため、製造工程の中からボトルネックとなっている工程を見つけ出し、解消していく必要があるのです。
ボトルネックを見つけるためには、以下4点に着目しましょう。
- 作業が停滞している場所はどこか
- 稼働率の高い工程はどこか
- ラインの中で最も作業時間が長い工程はどこか
- トラブルが起きやすい工程はどこか
作業が停滞する、トラブルが起きやすいなどはわかりやすい兆候ですが、稼働率が他と比べて高い工程にも注意が必要です。他工程のスピードに追いつけていないことを意味しており、ボトルネックとなる可能性があります。
各工程の進捗を見える化する
見える化とは、数値やデータを可視化することで問題点の発見や解決につなげていくための取り組みのことです。各工程に潜む「ムリ」「ムダ」「ムラ」を見つけて業務改善を図ることを目的としています。
各工程の進捗を見える化することでトラブルや問題を早期に発見できるため、問題解決までの時間も短縮されます。また、見える化により状況把握をしやすくなるため、現場での判断や決断をスムーズかつ正確に行うこともできるでしょう。その結果、業務効率が向上し、サイクルタイムの短縮につながります。
見える化を実現するためには、離れた場所からも各工程の進捗を把握できるようにするIoTシステムの導入が効果的です。人の手で行うと正確性やスピードに懸念があるデータ収集や分析ですが、IoTシステムを導入すればスムーズに状況を可視化でき、全体の作業効率向上が期待できるでしょう。
製造業の見える化は実績班長がおすすめ!
製造業の見える化には、「実績班長」の導入がおすすめです。ERPと連携できる実績班長は、ERP導入と同時に活用することで、コスト最適化と現場の最適化を実現できます。
- 【実績班長が製造業の見える化におすすめの理由】
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- 各種ERP・生産管理システムと多数の連携実績がある
- カスタマイズ性に優れていて、やりたいことを実現できる
- パッケージをベースに導入することでコストを削減できる
各種ERP・生産管理システムと多数の連携実績がある
MES領域を含めたERP検討時によくある課題として、「現場でそのまま使えない」ということが挙げられます。使えるようになるまでに手間やコストがかかってしまうと、導入を躊躇してしまい、見える化が実現しないケースもあるのではないでしょうか。
実績班長ならグローバル・国産ERP、生産管理システムと多数の連携実績があるため、スムーズに連携が可能です。ERPとMESを並行して導入できるため、納期を短縮できる点もメリットといえるでしょう。
カスタマイズ性に優れていて、やりたいことを実現できる
システム導入において「ベンダーが細かいカスタマイズをしてくれない」、「現場が使いづらく、やりたいことを実現できない」という課題もあります。
実績班長は現場が使いやすく、カスタマイズ性に優れているという点が特徴です。IoT化や装置制御など、やりたいけれど後回しになりがちだったことも実現できます。これまで可視化が困難だった生産現場の情報もリアルタイムで把握できるようになり、業務の改善につなげられるでしょう。
パッケージをベースに導入することでコストを削減できる
通常ERP導入には、システムの導入、カスタマイズ、追加開発などに莫大なコストがかかってしまいます。
その点実績班長ならば、パッケージをベースに導入することでコストの削減が可能です。ERPパッケージの管理レベルを生かしつつ、現場の運用を効率的に回すことができるため、ERPパッケージのカスタマイズコストに比べて低コストで現場の要求に応えられます。
浮いたコストでさらにIoT化を推進する仕組みを整えれば、より見える化や業務効率の向上につなげられるでしょう。
作業時間を短縮した実績班長の導入事例
「実際に実績班長を導入し、作業時間の短縮に成功した企業の事例を紹介します。
導入事例:高越鋼業株式会社
製造現場に中間在庫が山のように積まれ、顧客からの納期問い合わせにも1時間ほど要していた高越鋼業株式会社は、中間在庫品の見える化に取り組みました。実績班長の導入で、リアルタイムの在庫管理が可能となり、納期回答は即座にできるようになっています。
業種 | 製造業(ネジ) |
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サービス内容 | ネジ類(タッピングネジ・各種アッセンブリーネジ) 及び ネジ検査装置の製造 |
- 【導入前の課題】
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- 導入前の検討段階から社員が参加してシステムを構築すること
- 紙ベースで行っていた業務をシステム化すること
- 集合説明会を開いて一斉に操作方法をレクチャーすること
- 【導入後の効果】
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- 導入からおよそ半年後には決算用データとして使用できるほどの精度でデータ取得を実現
- 納期管理ができるようになり、物量が増えても対応できる状態に
- データ入力までをオペレーションに組み込むことでリアルタイムなデータ取得が可能に
- 外注への指示管理が可能に
導入後、実績班長を活用し続けたことで決算用データとしても利用できるようになり、たとえ物量が増えても正確な対応をキープしています。
まとめ
今回は、製造業における「タクトタイム」について、その定義やサイクルタイムとの違いを解説しました。サイクルタイムがタクトタイムに近い数値であるほど理想的で、サイクルタイムが長くなってしまう場合は、各工程の進捗を見える化するなど短縮するための工夫が必要です。
「実績班長」は各工程のデータをスピーディに収集し、進捗状況の見える化を実現します。アナログでは把握しづらかった状況を改善し、業務効率化につなげられるでしょう。