正確で安全な作業実行の指標となる「作業手順書」。「作業員にスムーズに作業をしてほしい」「製品の品質をキープしたい」といった課題解決に役立ちます。
すでに作業手順書を作成した企業も「作業員ごとに品質にばらつきがある」などの課題が残る場合は、いま一度、作業手順書の内容を見直すことが得策です。
今回は、製造業向けの作業手順書の作成方法を詳しく解説。分かかりやすい内容にするためのポイントや、製造現場の業務効率化に役立つIoTシステム「実績班長」もご紹介します。
目次
作業手順書の見本例・サンプル
はじめに作業手順書の見本例をチェックして、作業手順書に対するイメージを明確にしていきましょう。
上画像は「ポリエステルチューブの加工」を例にした、作業手順書のサンプルです。
作業手順を時系列に分割した上で、作業内容や必要となる部品・材料を記載するのが、作業手順書の基本的な書き方となります。
作業手順書の作り方
作業手順書のイメージがつかめたところで、具体的な作業手順書の作り方を見ていきましょう。
元請け会社ごとにフォーマット変更する必要などは特にありませんが、分かりにくい作業については「写真が添付できるフォーマット」などを利用すると便利です。
bizrouteのサイトでは、上図でも使用した「無料の作業手順書テンプレート」が用意されていますので、ぜひご利用ください。
1.作業手順書の概要を固める
はじめに作成する作業手順書の概要を固めます。
具体的には「誰に向けた、どのような業務の手順書なのか」を確認した上で、以下のように「5W1H」に当てはめて、 内容を記載していきましょう。
記載内容 | |
---|---|
Who (作成部門) |
担当者名:例 ○山△郎 責任者名:例 □川○夫 |
Why (目的・求める結果) |
手順書を通して達成したい目的 例:ポリエステルチューブの加工 |
Where (作業場所) |
どの工場、レーン、機器・機材の設置場所で作業するか 例:○○第2工場 |
When (日時に関する情報) |
作業手順書の作成日と改訂(更新)日 例:作成日・2022年10月10日 改訂日:2023年1月10日 作業にかかる目安時間 例:○○個の加工で○分 |
What (作業に必要な機材や機器・人数) |
各作業でどのような機器・機材が必要になるか 例:ポリエステルチューブ、ハサミ、測定器、仕様書 各作業でどのくらいの人数の必要になるか 例:1人〜 |
How (作業手順の方法) |
どのような手順で作業を進めるか 必要に応じて画像や動画も使用する |
「5W1H」を活用すれば、 漏れがなく読みやすい手順書を作成することが期待できるため、おすすめです。
2.作業・業務内容を洗い出す
作業手順書の概要を固めたら、作業・業務内容を洗い出していきます。作業・業務内容を洗い出すためには、以下のような方法があります。
- Excel・Wordへ作業内容の粒度を考えず書き出す
- メンバー全員の作業を目で見て確認する
- メンバーから作業内容をヒアリングする
この他「作業の順番、タイムスケジュール、所要時間、納期、作業頻度、作業人数、材料、作業前後に実施すべきこと」なども併せて確認してください。
漏れのない作業計画書をつくるために、作業・業務内容ももれなく洗い出すことを心がけましょう。
3.洗い出した作業内容を分解・グルーピングする
洗い出した作業内容は、細かい作業単位と大きな作業単位が混在しているかもしれません。
大きな作業単位については、細かい作業単位に分解し、作業単位の粒度を揃えます。
その上で作業手順の追加・並べ替え・削除などを実施してください。
最後に、大きな作業工程ごとに、作業手順をグループ分けしてまとめる「グルーピング」をしていきます。
4.作業手順書の大項目を決める
グルーピングしたものは、作業手順書における大項目となります。
例えば、冒頭にご紹介した作業手順書のサンプル(ポリエステルチューブの加工)における大項目と、細かい作業単位は以下の通りです。
- 【大項目①ポリエステルチューブの切断】
-
- 仕様書の用意・確認
- 加工の準備
- ポリエステルチューブを取り出す
- ポリエステルチューブの切断(200mm)
- 【大項目②ポリエステルチューブの収納】
-
- ポリエステルチューブをまとめ、仮固定
- ポリエステルチューブを段ボールへ収納
作業内容が複雑で工数が多い場合は、「大項目」「大項目を構成する作業(構成作業)」「構成作業を細かく分割した作業」の3段階に分けると見やすくなります。
なお、作業手順書を社内あるいはクライアントへ提出する場合なども、書き方を大きく変える必要はありませんが、 注釈を増やすなど、より読み手が理解しやすいように配慮しても良いでしょう。
5.項目に作業内容を記載していく
作業手順書の大項目や細かい作業単位が決まったら、項目ごとに作業内容を記載していきます。
記載する際は以下のような問題がないかチェックし、該当する場合は、より良い内容に変更してください。
チェック項目 | 具体的な内容 |
---|---|
作業手順に問題はないか? |
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無駄・無理な作業はないか? |
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作業分担に問題ないか? |
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必要のない動作はないか? |
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6.トライアル運用・修正を行う
完成した作業手順書を用いて、実際に作業者に作業をしてもらいます。
このトライアル運用の結果をヒアリングして、分かりづらい箇所や、特に注意喚起すべき点などがあれば、作業手順書を修正しましょう。
なお、トライアル後に「分かりづらい」「作業がしづらい」といった意見が出ることもあるため、それらを反映させて、定期的にバージョンアップしていくことが望ましいです。
分かりやすい作業手順書を作るときのポイント
分かりやすい作業手順書を作るためには、誰が見ても理解できる内容になるよう、書き方を工夫する必要があります。
作業手順書に写真(画像)を用いる場合は、あくまでも作業者の目線で撮影・編集を行うことが重要です。
以下、分かりやすい作業手順書を作るポイントを「書き方」「写真」ごとに、見ていきましょう。
【書き方編】誰が見ても理解できる内容になっているか確認
作業手順書は、作業の流れに沿って記載すると分かりやすくなりますが、それだけでは不十分です。以下のポイントに気をつけて記載し、誰もが理解できる内容を目指しましょう。
専門用語や難しい言葉は利用しない
作業手順書の利用頻度が高いのは、新人や経験の浅いメンバーです。
そのため、作業手順書の作成に際しては、専門用語や難しい言葉を利用しないようにしましょう。
どうしても専門用語を含めた説明が必要な場合は、 注釈を入れるなど読み手が理解しやすいように配慮してください。
【NG例】
×「作業時は手順書を遵守し、円滑な作業実施を心がける」→○「手順書の内容を守り、スムーズな作業を心がけましょう」
主観やあいまいな表現は避ける
作業手順書では専門用語や難しい言葉は利用しない一方、作業内容をできるだけ細かく記載します。
ただし、主観的な表現や曖昧な表現は避けるようにしましょう。
主観やあいまいな表現をすると、読み手の解釈が分かれ、作業品質にばらつきが出る恐れがあるからです。
【NG例】
×「切断作業では気をつけてください」→○「切断作業では、ハサミの使い方に注意して、怪我をしないようにしてください」
基本は一文になるように意識する
作業手順書では「一つの動作の説明が一文」となっていることが望ましいです。
ただし一文が長くなりすぎる場合は、作業手順が分かりやすくなるように区切りましょう。
【NG例】
×「包装フィルムからポリエステルチューブを出し、測定器に合わせて、200mm幅にポリエステルチューブを切断した後、容器に仮置きします」
→○「包装フィルムからポリエステルチューブを出す。測定器に合わせて、200mm幅にポリエステルチューブを切断する。切断したポリエステルチューブは、容器に仮置きしましょう」
【写真編】作業者を念頭において撮影・編集を行う
作業手順書に使用する写真は「実際に作業をする人の分かりやすさ」を念頭において撮影・編集します。撮影対象から離れ過ぎていないか、ポイントが分かりにくくないかなど、シビアにチェックしてください。
写真を撮影するときは「作業者目線」を意識する
作業手順を説明する写真は「作業者目線」で撮影することが基本となります。
例えば、以下の「エンジンポンプの運転操作の作業手順書」では、すべてが作業者の目線で撮影され、さらにポイントを丸で囲むなど、注目すべき箇所が明確になっている点も優れています。
画像引用元:「ポンプ施設管理事務所オペレーターの業務改善について」自治労
PC標準の編集アプリを活用する
作業手順を説明する写真は、より視覚的に分かりやすいものとするため、編集することがおすすめです。
すでに注目すべき箇所を丸で囲む工夫はご紹介しましたが、以下のように、画像に吹き出しをつければ、より直感的に作業内容や留意点が理解しやすくなります。
参考:厚生労働省 作業手順書のビジュアル化
WindowsやMacの標準搭載機能だけでも吹き出しはつけられるため、画像編集ソフトなど改めて用意する必要はありません。
なお、吹き出し付き写真を利用した作業手順書は、作業に複数の道具が用いられる場合や、留意点が多い場合などに向いています。
実際に現場で一連の作業を行う
作業内容については、現場で実際に経験していないと分からないことも多いです。
内容の漏れをなくすためにも、作業手順書の作成担当者は1度、実際の現場で一連の作業を体験することが望ましいでしょう。
その上で、実際の作業者へヒアリングを実施すると、作業に対する深い理解に基づいた手順書を作成することが期待できます。
製造現場の業務効率化を図るなら「実績班長」がおすすめ
より良い作業手順書の作成に際しては、製造現場の可視化(見える化)と、様々なデータが不可欠です。
そんな製造現場の可視化と様々なデータの収集を通じて業務効率化をサポートするのが、製造実行システム「実績班長」です。
大手から中小企業まで、すでに様々な製造業の現場で導入されているので、以下で導入事例をチェックしてみましょう。
導入事例:株式会社府中テンパール
業種 | 製造事業 |
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サービス内容 | 配線器具などの製造 |
- 【導入前の課題】
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- パッケージシステムを利用して費用を抑えてIoT導入したい
- 売上に対する実工程を可視化したい
- コスト分析のためのデータを取得したい
- 【導入後の効果】
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- 低コストでのシステム導入を実現
- データ収集による可視化が可能に
配線器具などの製造を行う株式会社府中テンパール。「実績班長」のパッケージシステムで低コストに IoT導入したところ、これまでアナログな方法で実施していた「業務改善のためのデータ収集」も簡単で正確に見える化。システム導入を機に、自社の業務整理もでき、作業効率化と品質面の統一化が図れました。
まとめ
作業手順書は、作業者の目線に立った、分かりやすい内容であることが重要です。
そして、より良い作業手順書を作成するためには、製造現場の可視化・業務の標準化なども同時に考える必要がありますが、そのためには正確なデータが必要となります。
例えば「実績班長」なら、古い既存システムをIoT化し「人・機械・環境」など、様々なデータが収集可能。製造現場の改善を通じた、業務効率化が期待できます。
今回ご紹介した内容を参考に、業務改善・業務効率化という大きな視点から、自社品質を守るための作業手順書を作成してください。