QC活動とは、10名ほどの小集団で企業の製品・サービスの品質を改善させていく活動です。品質管理で生じていた無駄・ムラ・無理を解消したり、実績の数値目標を達成したりするために役立ちます。ただ、「QC活動をどう進めるべきか」、「どのように計画を立てるか」、「活動を成功させるポイントはあるのか」知りたい方もいるでしょう。
本記事では、QC活動の流れや計画の立て方、成功ポイントと事例、注意点を解説します。QC活動の成功につながるシステムも紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
QC活動とは
QC(Quality Control)活動とは、品質管理を意味します。QC活動は、企業内で製品・サービスの品質を改善させるための活動です。
QC活動では、全従業員を「QCサークル」という10名前後の小集団に分け、メンバーがお互いに役割分担しながら、「QCストーリー」に沿って行うことが一般的です。
QCストーリーとは、品質改善を果たすまでのステップの流れで、主に以下の4つに分けられます(※後述)。
- 問題解決型
- 課題達成型
- 施策実行型
- 未然防止型
日本では1970年〜80年代に普及 し、海外の企業から注目を集めました。当時の日本製品は国際競争力が高まり、そこに「日本企業独自の経営手法が貢献している」と考えられたためです。海外の企業は、経営手法の一つとして、QC活動のような小集団活動に注目しました。
QC活動の目的
QC活動の目的には、次の3つが挙げられます。
- 従業員の能力向上や自己啓発
- 働きやすくやりがいのある職場環境作り
- 顧客満足度の向上と社会貢献
自主的に業務を振り返ること、また他のメンバーとのQC活動自体を通して、従業員がスキルアップします。単に業務を遂行するだけでなく、「いかに品質を向上させるか」という視点で普段から業務を考えるようになり、自己啓発としての側面もあります。
品質管理には、従業員のモチベーションが密接に関係します。そのために、働きやすくやりがいのある職場環境作りを実現することも大切な目的の一つです。
また、製品・サービスの品質を評価するのは消費者です。消費者のニーズを満たし、経済活動を通して社会貢献していくことも目的として挙げられます。
QC活動のテーマ|製造業
製造業では、こういった目的を達成するためのテーマとして、「不良率の低減」や「生産能力の向上」などを掲げられます。
また、グローバル化した昨今では、解決の困難な課題にも取り組まなければなりません。例えば、「価格低減」や「労働時間の短縮」など、一工程、一部門での取り組みではなく、組織全体を巻き込む必要があります。
QC活動の進め方
QC活動は、次のステップで進められます。
- 【QC活動の進め方】
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- 1. QC活動のサークルを作る
- 2. 活動テーマと目標を決める
- 3. QCストーリーを選ぶ
- 4. 活動計画を立てて実行する
- 5. 活動内容をまとめる
それぞれのやり方を解説します。
1.QC活動のサークルを作る
まず、メンバーを決定し、QC活動のサークルを作ります。メンバーは、10名前後で、共通する業務を担当する従業員を選ぶことがおすすめです。
- 【サークルの作り方】
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- メンバー10名前後
- 共通する業務の担当者で構成
メンバー数が多いほど品質を改善できるわけではありません。人数が15名、20名と増えると、当事者意識が薄まり、発言や行動をしない無責任なメンバーが出てくる可能性があります。10人ほどが全員に責任感をもたせるために、程良い人数とされているのです。
また、共通する業務を担当していなければ、テーマの選定に苦労します。あるテーマの業務を担当していないメンバーは、内容の理解から始めなければなりません。全員がなんらかの業務を共通して担当しているメンバーを選びましょう。
2.活動テーマと目標を決める
QC活動を進めるうえで、特に重要なステップです。最適な活動テーマを選ぶために、まずは現状の問題を洗い出すことから始めましょう。
テーマを絞るポイントは、部門で掲げている目標と実績で、乖離の大きな問題を優先することです。かつ、問題解決に必要なコストや、解決による効果を踏まえ、総合的に判断します。製造業では、「不良率」「作業ミスの低減」「教育訓練」「作業効率化」といったテーマを選ぶことができるでしょう。
目標を決める際は、「いつ」「なにを」「どのように」を具体化し、計画に落とし込めるよう設定してください。
3.QCストーリーを選ぶ
QCストーリーとは、テーマで目標を達成するために、問題を解決する流れ(ステップ)です。テーマに沿ったQCストーリーを選ぶことで、効率良く問題の解決につなげられます。
QCストーリーは、主に以下の4種類に分かれます。
- 【QCストーリーの種類】
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- 問題解決型:問題の原因を見つけ、対策を講じて解決する
- 課題達成型:より高い目標のために課題を解決する
- 施策実行型:すでに問題の原因と解決策が明らかで、スピーディに解決する
- 未然防止型:事故・トラブルの原因を分析し、再発防止に取り組む
問題解決型では、問題のあるマイナス状態がスタートで、対策を講じてプラスマイナスゼロの状態に戻します。原因に対する適切な対策を選ぶことも重要です。問題が解消したら、その状態をキープできるよう努めましょう。
課題達成型では、プラスマイナスゼロの状態からさらなる高みを目指して、課題を設定し、乗り越えていきます。理想像を実現するために適したQCストーリーです。
施策実行型では、「原因の追究」と「解決策の検討」をスキップします。それらはすでに明らかな場合に、スピーディな解決を重視するアプローチです。
未然防止型では、これまでに起こった事故・トラブルの原因を重点的に分析し、再発防止に取り組みます。一旦、問題が解決していて今後、対策が必要となるテーマに適します。
テーマに合ったQCストーリーを選ぶと、効率よくQC活動を進められるでしょう。
4.活動計画を立てて実行する
QCストーリーに沿った活動計画を立て、実行に移します。活動計画には、期日までに目標を達成するために、「誰が」「なにを」「いつ」「どうするか」を具体的に記載してください。メンバーの立場や能力に応じて、役割分担しましょう。また、計画の進捗度を把握するために、実績を記入できるようなフォーマットにすることが大切です。
作成した活動計画は、上司や管理者のチェックを受け、承認・協力を得てから着手してください。その後はメンバーで定期的に集まり、進捗の確認や、今後の対応について話し合いましょう。会議では議事録を残して、上司・管理者に提出します。
5.活動内容をまとめる
活動計画に沿って進め、活動を終えたら内容をまとめます。まとめは、「活動計画」と「活動運営」に分けて考えましょう。
活動計画については 、「当初掲げていた目標は達成できたのか」、「どのくらいの達成率か」、「どうして達成できなかったのか(達成できたのか)」などを振り返ってください。また、活動運営についても、「リーダーや書記の役割を果たせていたか」、「お互いのコミュニケーションはどうだったか」、「資料はわかりやすかったか」などの視点で分析します。
次回のQC活動に活きるよう建設的に反省し、まとめた報告書を上司・管理者に提出して終わりです。
QC活動を成功させるポイント
QC活動の成功率を高めるやり方のポイントを2つ解説します。
- 【QC活動を成功させるポイント】
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- 現状と目標を見える化する
- 活動成果はしっかり共有する
以下で、それぞれ解説します。
現状と目標を見える化する
QC活動を進める際には、現状と目標を見える化し、進捗状況を常に把握しておくことが重要です。改善に成功したとしても、数字でわからなければ、「残りどのくらい改善すればいいのか」をつかめません。また、現場で実績を紙に記録し、デジタル化してまとめるまでにはタイムラグが生じてしまいます。
リアルタイムで現状と目標を見える化するためには、「実績班長」の導入がおすすめです。
実績班長では、「多台持ち作業」や「複数人同時作業」といったものづくりの流れに合わせて、たった4ステップで実績収集が可能です。収集したデータを下図のように見える化し、リアルタイムの進捗を把握できます。しかも、タブレットやパソコンからWebにつなげば、遠方や夜間の工場での稼働状況もチェック可能です。
「実績班長」の導入で見える化に成功した事例
新協技研株式会社は、自動車・オートバイを中心にさまざまな部品を製造しています。
- 【導入前の課題】
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- 自社にIoTを導入できるか、データ活用できるかを懸念していた
- 手書き日報をもとに改善したが、日報の保管に終始し、改善に至らなかった
- 製品品質の影響する温度などのプロセス条件を安定させたかった
- 【導入後の効果】
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- IoTを活用してメッキ層の温度データを収集し予兆検知
- 年間数百万円単位の不良損失を削減
- 現場の見える化により現場作業者の意識改革を実現
実績班長の導入により、IoTシステムを構築。社内のカイゼンはこれまで以上に進み、自動でデータからグラフ化まで行える「見える化」でカイゼン意識が変わりました。年間数百万円単位で不良損失を削減し、ボイラー運転時間を120時間ほど短縮することにも成功しています。
実績班長は、実績収集や進捗管理、在庫管理、品質管理、労務管理などの機能を有し、製造業における課題を解決できるシステムです。QC活動を成功に導き、企業全体を改善させるために導入を検討してはいかがでしょうか。
活動成果はしっかり共有する
企業におけるQC活動は、いくつものQCサークルを結成し、同時並行で進めます。あるQCサークルで出た活動成果を、他のQCサークル向けに発表することで、「私たちも頑張らなければ」という刺激となるでしょう。つまり、活動成果の共有は、QCサークル同士の切磋琢磨を促します。
また、QC活動は一度やって終わりではありません。自社内にQC活動の知識・ノウハウを蓄積させるためにも、活動成果は共有すべきです。成功事例として記録を残せば、次回の実施時にメンバーの教育に利用することもできるでしょう。
QC活動を進める注意点
QC活動を進める際には、注意すべきポイントもあります。
- 【QC活動を進める注意点】
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- メンバー間のモチベーション格差を防ぐ
- 手段を目的化させない
以下で、それぞれ解説します。
メンバー間のモチベーション格差を防ぐ
QC活動では、チームワークが重要です。立場や能力の異なる10名が集まると、メンバー間でモチベーションに差が生じます。モチベーションの高すぎるメンバーに負担が集中したり、逆にモチベーションの低いメンバーが任せられた役割を果たさなかったりという事態を避けなければなりません。
モチベーションをバランス良く保つためには、意見を交換することです。「あのメンバーは空回りしている」、「このメンバーは無責任だ」と責め合うのではなく、QC活動のテーマと目標に立ち返り、「どうしたら目標達成に近づくか」を議論することが重要です。テーマに対する意見を出すと、当事者意識も自ずと芽生えていくでしょう。
手段を目的化させない
QC活動は、QCサークルの結成に始まり、テーマや目標、QCストーリーの選定、活動計画の策定、実行まで長いステップを踏みます。各ステップで資料作り、議事録作りに追われるため、このような手段自体が目的化してしまう恐れがあるのです。手段に満足すると、肝心な成果がおざなりになりかねません。
手段が目的化しないよう、目標と実績を常に確認しつつ、またメンバーのモチベーションを維持できるよう、お互いに意識することが大切です。
まとめ
本記事では、QC活動の流れや計画の立て方、成功ポイントと事例、注意点を解説しました。
QC活動は、メンバーの選定からテーマ・目標の設定、QCストーリーによる活動計画の立案・実行、活動内容のまとめで進めていきます。
活動を成功させるためには、現状と目標を見える化させ、成果の共有・発表をしっかりすることが大切です。また、メンバー間で責任感・モチベーションに差が生じたり、手段を目的化させたりしないことにも注意してください。
QC活動を効率よく成功させるためには、「実績班長」のようなシステムの導入がおすすめです。品質管理に限らず、ものづくり企業のさまざまな課題を解決できるシステムを導入してはいかがでしょうか。